「早く勝たなければチェコ軍の援軍が到着するが…
諸君らはそれに勝てるというのだね?」
「か、海上に展開している艦艇と航空攻撃により阻止します」
一人の指揮官がそう言ったが、
相変わらず総司令官閣下は冷たく、そして正確に返答し続ける。
「ならば、海上部隊と航空部隊を率いていた者が
昨日からいなくなっているのはどういう事だ?」
「最前線で戦闘指揮を執っております。
恐らく3日間ほどここに来れな―」
「それは勇敢だな。あの臆病者たちが、
まさかチェコ空軍の激しい攻撃で
あらゆる軍港と空港が攻撃されている下に出向いていくとは」
「私は戦果を求めているんだ。
諸君らの働きに期待しているのだぞ」
「…明日の報告を楽しみに待っている。
勿論、報告できればの話だが」
彼がそう言うと、周りにいた部下は一言も発することなく
下を向いて部屋から出ていった。
悲惨な目に合う海南武警もいれば、
ますます悲惨な目に合う者たちもいた。
8月15日、海南省。楽東リー族自治県。
この県の湾岸部にある高速道路は
人道回廊として非武装地帯に指定されていたが、
全ての勢力がそれに従うとは限らなかった。
しかし海南救国政府もチェコ政府もそれに従っていたため、
誰もがここは安全だと信じ切っていたのである。
過去に命がけの逃走劇を演じた倉田朝羽もまた、
その不幸な人々の中の一人だった。
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