「サンヤー・ハイウェイ・ギャングだ! 逃げろ!」
その方向を見ると、バイクやサイドカーに乗った集団が
銃火器を振りかざして迫ってきていた。
「ここは人道回廊じゃなかったのか!?」
「殺されるぞ! 逃げろ!」
悲惨なことに回廊は大渋滞を起こして
機能不全に陥りかけていたため、
とても車で逃げられる状態ではなかった。
何人かがパニックに陥り、
ドアを開けて外へと逃げていく。
「は、早く車なんか捨てて逃げようよ!
このままじゃ殺されちゃう!」
そう両親と兄に必死に提案したが、
帰ってきた返答は絶望的な物だった。
「駄目だ… バイク相手じゃとても逃げられない」
現にギャング達は、車を捨てて逃げ出そうとした者や
無理矢理車両を押しのけて逃げ出すものを片っ端から撃ちまくっていた。
時折その流れ弾が別の車両へと飛んでいき、さらにパニックが伝染する。
「でも父さん!」
ギャングの一人が空に向かって拳銃をぶっ放した。
さらに悲鳴が大きくなっていく。
「全員止まれ!動くんじゃないぞ!」
それを聞いてなお一人の男が車から飛び出したが、
すぐさま撃たれて地面に倒れた。
背中から血が流れており、苦しそうにせき込んでいる。
「お前らもこうなりたくなかったら、
今すぐに金目の物をかき集めろ!
差し出さない奴はぶっ殺してやる!」
ギャングのリーダーらしき男がそう言ったが、
私たちはそんなものを一切持っていない。
「金目の物なんかないのに…
ああ、一体どうすればいいのよ!?」
「車内にあるものを全部かき集めろ!
そうすれば許してくれるかもしれない…」
そんなことを両親が言っている間にも、
ギャングの一人がこちらにやってきた。
片手にリボルバー銃を持ち、腰に短刀をぶら下げている。
(ま、まだ死にたくないよ…)
そんな事を思った時だった。