一方その頃、ロベルトとルカーシュ・プロコペツ―
元国家憲兵大隊所属の熟練兵― は流れ弾などで
負傷した市民がいないか辺りを走り回っていた。
「君たち、大丈夫かい?」
プロコペツが車をのぞき込むと、
そこには4人の日本人家族が乗り込んでいた。
「は、はい…」
その中の一人が回答する。
見た感じ、歳は女子高生ぐらいだろうか?
「ルカーシュ・プロコペツ、自警団所属だ。
もう安心してもいいよ」
「あ、えーと… 倉田朝羽です」
「…そうか、名前を教えてくれてありがとう。
じゃあ、僕は負傷者がいないか探してくるね」
「あ、ありがとうございます…」
そう言って、プロコペツはまた駆け出していった。
それと同じとき、ライラ・ニーニコスキは
ルボミール・プロヴァズニークとあーだこーだ話し合っていた。
「救出したはいいものの、本当にとんでもない量の避難民ですね。
…これ、どうやって送り届けるつもりなんですか?」
「後で海軍にでも頼んで脱出させるさ。
無線の周波数はチェコ政府に教えてもらってるし、
LCACとかを揚陸させりゃどうにかなるだろ」
「そうですか。ありがとうございます」
「それで、お前はこの後どうするんだ?」
「東方市近郊への深部偵察に。
それと、場合によっては現地部隊への連絡も。
昨日から無線が不通になってるんです」
「そうか… 俺たちも協力するか?」
「協力? なんか貸してくれるんですか?」
「いくら隣の市とはいえ、こっからじゃ遠いだろ?
こっちの車両に乗せてってやろうか?」
「そりゃ乗せてって欲しいですけど…
あなたの上司は快諾するんですか、それ?」
「こっちの任務に協力してくれたんだ。
向こうも同じように協力させてくれるだろ、多分」
「…あらかじめ言っておきますけど、
私は貴方の責任について弁解しませんからね……」