「じゃあ気を取り直して.....」
『っ』
女の顔からも”うわっまたかよ”と音も無いのに聞こえてくるようだった。そんな彼女をなだめるようにして話し始める
「安心して。あなたの事はもう詮索しないわ。最後に聞きたいのは、そのペスト医師についてよ。名前と、何処にいるのか話してくれる?」
『ハイハイ.....だが、それを話したとして、お前が私にちょっかいかけない確証が欲しいねぇ』
「そうねぇ.....」
「もし貴方が今後、”私が原因”で被害を受けたら、私の命を差し出す.....なんてどうかしら?」
一瞬ぽかんとしたような表情を見せた後.....
『.....は?お前正気か?こんなことの為に。』
「ええ、勿論正気よ。でないとこんなこと言わないわ。貴方に信用させようとしたら、これくらいしないとダメみたいだし。」
『わかった。でもよ、話すのは名前といる場所だけだ。あとは自分で探せ』
「ええ、、十分」
数分の後、そのペスト医師がカッルという名前である事、そして隣国の帝国にいることをやっと聞き出せた。
「ありがとう.....協力してくれて。感謝してるわ。これで、”犯人”を殺せる」
『私は早く帰りたいだけだ.....だがよ、おめーじゃあいつにゃ勝てねーぞ。一応の忠告だ。アーサーを泣かせたくないならやめとけ。』
親切心なのか、厄介ごとを増やさないための釘なのか、どちらとも似つかない言葉がルイーシャに刺さる。
「ええ、確かに”私一人じゃ”勝てないわね。」
怪しく微笑むルイーシャ。そこで違和感に気付く、余りにも静かだ。街中の人の声も店内からの話し声も何もかも、、聞こえない
『なんだ?こりゃ』
辺りを見渡すと全員が”こっちを見ていた”瞬きも呼吸をしているかも怪しい。
『これで勝ったとしても、おめーの周りは地獄だぞ?』
「どうかしら.....やってみないと分からないわ」
ルイーシャが指を鳴らすと、何事もなかったかのように街が動き出す。静けさは人々の声の濁流に飲まれていった。
「じゃあそろそろお暇させていただくわ。長時間拘束して悪かったわね、今後、貴方に余計な詮索はしないわ。何かない限りは。」
『全くだ.....』
ルイーシャは席を立ち、踵を返して会計を済ませ、店を出ていった。何重にも交差する人の流れが、彼女の後ろ姿をかき消していった。
ため息をつきながら、ルェンは机に目を伏せる。目の前にはコーヒーの入ったカップが一つ。
『結局飲んでねぇじゃねーかよ、ったく』
将来的にカッルとの茶番が始まりそうだぁ…()どんとこい()