「…畜生、照明弾だ! 来るぞ!」
その声が辺りに響き渡るのと同時に、
遠くでは海南軍による攻撃が始まっていた。
照明弾が発射されたとき、
海南武警の離反派に所属するクリストファー・トンプソンと
ミラネッティ・サーラの二人組は他の離反派と共に
塹壕に立てこもっていた。
今やサーラが乗っている多脚戦車は
大量の土嚢やらヘスコ防壁やらで固められており、
高性能戦車から簡易トーチカへと成り下がっていたのである。
「おい、奴ら来たぞ。
…聞こえてるか、サーラ?」
「うん。聞こえてる…」
数日間にわたりぶっ続けで続いた塹壕戦は、
短時間での犯罪者制圧を目的として編成されていた
海南武警の精鋭部隊を肉体面でも
精神面でもすっかり疲弊されていた。
しかも敵は犯罪者などではなく、
(ほぼ全員が顔も知らないような奴だったが)
かつての同僚なのである。
こうしてこの部隊の士気や充足は急速に低下していき、
僅かな空挺軍の精鋭兵とかき集められた民兵の増援によって
どうにか戦線を維持するまでに
この地点での戦況は悪化していたのである。
「ここを突破させるな!
意地でも奴らをここで食い止めろ!」
ここの部隊を指揮している
チェコ空挺軍の小隊長がそう命令した。
大量の敵兵が奥からやって来るが、
友軍による支援砲撃や機関銃の掃射により
たちまちのうちになぎ倒されていく。
どうにか防衛線の近くまで到達した敵兵たちも、
ワイヤーや手榴弾によって作られた簡易的な地雷によって
次々と周りを巻き込みながら吹き飛んでいく。
「畜生、奴ら平気で突っ込んでくるぞ!」
「とにかく撃ち続けろ!」
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