「追撃は無用だ、
とっとと残像兵を片付けて塹壕を奪還しろ!
もちろん、奴らが増援を引き連れて帰ってくる前にだ!」
ルボミールが再び命令を下した時、辺りはすっかり静かになっていた。
周りには大量の薬莢と死体が転がっている。
「サーラ!サーラぁ!」
そう叫びながら、その中を一人の男が走っていった。
「おい、大丈夫か!?
今助けてやるからな!」
そう言いながら、前部が大破した多脚戦車のハッチを
どうにかこじ開けようとしている。
それを見て、ルボミールが一言命令した。
「スヴァトスラフ、シュチェチナ…
あ、それとロベルト。
そこで足掻いてるジェントルマンを助けてやれ」
「了解」
「…おい兄ちゃん、どいてろ。
俺たちがコイツをどうにかしてやる。
いいかロベルト、
いち、にの、さんで開けるぞ。」
「それで開けられるのか?」
そう言いながら二人でハッチを掴む。
「開けられなかったら別の手を試すだけさ。
行くぞ… 一、二、今ぁ!」
そう言ってハッチを全力で持ち上げる。
「おい、サーラは大丈夫なのか!?」
そう言う男とロベルトがすかさず中を覗くと、
そこには一人の女性が眠るように気を失っていた。
ロベルトと男とで急いでその女性を引っ張り上げる。
「おい、彼女は大丈夫なのか!?」
「えーと、まあ、無傷だと思うぜ。
見たところ特に外傷も無いし、
多分被弾のショックで気絶してるだけだ」
「あんたが何をそんなに心配してたが知らんが…
コイツは乗員保護用の装甲カプセルを装備してるんだよ。
この中に居さえすれば、戦車砲でも喰らわない限り
砲撃でもなんでも守ってくれるって寸法だ。
それに装甲が耐えれないほどの衝撃はできる限り
前部で吸収できる構造になってるし、
それからHEAT弾対策だってー」
シュチェチナがそんな風にしゃべり続けていたが、
誰一人としてそれを聞いている者はいなかった。