「時間の遅れを取り戻すぞ!
お前ら装甲車の上に載れ!」
そう分隊長が命令すると、
側面に付けられたスラットアーマーを梯子代わりにして
分隊員が次々とAPCの車体の上へと乗り込んでいく。
全員が乗り終わると、装甲車が再び移動を再開した。
道路はどこもかしこも荒れており、
おまけに大破した車両もいくつか転がっていたが
どうにか前進することはできる。
乗り心地は最悪だったが、それでも歩くよりははるかにマシだった。
「各自警戒しろ。どこに敵がいるか分からんぞ」
「この市街地でですか?
近距離ならともかく、遠くから斜線が通るとはとても思いま―」
…そう言い終わらないうちに、
どこからか一発の銃弾が車体に命中した。
「敵の狙撃手だ! 不味いぞ!」
そうAPCのドライバーが叫ぶ。
「どうするんですか、隊長!?」
「止まっても的になるだけだ! 走り続けろ!」
「畜生!」
そう言われて、自棄になった運転手はさらにスピードを上げて走りだした。
一応狙撃は止んだが、その代わりに更なる問題が前から迫ってくる。
「前方から― いや、前方の交差点に敵車列!テクニカル3台!」
「各自適当に撃ちまくれ! 通過できりゃそれでいい!」
兵員を満載した1台の小型トラックと
無反動砲を乗せた2台のテクニカルを横から一方的に撃ちまくる。
先行していたテクニカルの運転手が撃ち抜かれ、
そのままコントロールを失って電柱に衝突した。
しかし車列は止まるそぶりを一切見せず、
むしろ逆にスピードを上げてどうにか衝突を回避しようとしている。
「ああクソ!衝突するぞ!」
「知るか! 衝撃に備えろぉ!」
装甲車は強引に軽トラックを弾き飛ばし、
そのまま全速力で前進していった。
その後も目標地点に向かって無茶苦茶に進んでいき、
敵の銃弾が飛んでこなくなったところでようやく停車する。
「おい、お前ら生きてるか!?」
そう聞いて分隊員がどうにか返事をしようとしたが、
出てきたのは力のないうめき声だけだった。
「この程度でへこたれるな、救難部隊が来るまであと10分だぞ!
もたもたしてると作戦がすべてお釈迦になる!
…総員降車だ、敵陣地をぶっ潰しに行くぞ!」
どうにか立ち直った分隊員たちが装甲車から降り、
弾倉を装填してもたつきながら展開していく。
敵の対空陣地まではほんの少しだった。