チェコ軍の野戦砲兵陣地には、12門もの152mm榴弾砲が展開していた。
あちこちに空薬莢が散らばり、無線からは砲撃要請が飛び交い、
付近では弾薬を乗せた補給トラックが盛んに動き回っている。
そんな中で、砲兵部隊は飛び込んできた砲撃要請をきっちりこなした。
「砲撃だ!
座標チャーリー・オスカー・デルタ、弾種誘導榴弾! 復唱!」
「座標チャーリー・オスカー・デルタ、弾種誘導榴弾!」
「撃て!」
一斉に放たれた12発の誘導砲弾は、
目標に向かって一直線に飛んでいった。
あちこちに飛び交う対空砲火を片っ端から抜き去りながら
広場の全てを覆い尽くすように空中で着弾し、
展開していた対空陣地を一瞬で消滅させる。
対空機関砲やMANPADSが誰かの腕ごと空中に向かって吹き飛んでいった。
その光景を見て誰もが歓声を上げていたが、
それよりもはるかに大きい声で分隊長が叫ぶ。
「おい!救難部隊が上空を通過するまであと何分だ!?」
それに答えるように、
大型ヘリの騒々しいローター音が
すぐ近くまで迫ってきた。
「どうするんですか分隊長!?
もう救援部隊は目と鼻の先です、
このままだと無線連絡する前に彼らが引き返していきますよ!?」
それを聞いた分隊長は10秒ほど考え込み、
そして大声でこう叫んだ。
「フレアだ、フレアを使え!緑色の奴だ!」
それを聞いて、二人の兵士が即座に発煙筒を取り出した。
空に向かって緑色の煙が立ち上っていく。
上空に展開していたヘリ部隊が目と鼻の先まで近づくのと、
緑色のフレアが上空へと立ち上っていくのはほぼ同時だった。
「目標アンヌ=マリーに信号を確認!
作戦は続行、作戦続行だ!」
分隊のすぐ上を何十機もの大型輸送ヘリが通過していく。
その中の一機に載っていたドアガンナーの一人が、
身を乗り出してこちらに親指を立てていた。
「…とりあえず、これでひと段落付いたな。
それで、海口にはいつ行くんだ?」
「すぐって訳にはいかないが…
その時が来たら、また焼き尽くさなきゃならん」
「ああ… そうだな」
「その時が来たらな… その時が」
→Dust to Dust/塵は塵に