かとかの記憶

ル=グウィン 再読 / 6

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katka_yg 2025/05/06 (火) 21:55:21 修正

文化制限法

ハイニッシュシリーズではおおよそ各世界の土着の現地民との接触が話題で、その際、現地社会の文化的水準を大幅に超えるような科学技術や物品を持ち込むことは法律で禁止されている。これは強いモラルで、建前や空文ではなく、破るのは無法者で外道扱い。

上の心話と、これはハイニッシュシリーズの挙げられる特徴のひとつだろう。それとアンシブルと。

なぜそれが禁止されているのかは、現地の文化を「保護」するのような曖昧な意味だけでなく、たとえば先ほどの『辺境の惑星』でもランディンの人々も強力な武器を持ち込んでいないが、たとえ自らの存亡がかかっていても火砲などを作ろうとしない。現地部族のいつくかが毒矢や毒槍を使っていることがわかってはじめて毒の使用もタブー解禁された。

ガールとの戦いではアガトも矢傷を負う。毒の可能性に恐怖感を覚えるいっぽう、

ガールは吹き矢や矢に毒を塗りはしないが、ランディンの人びとが彼らにむかって射かけた矢を拾って使うことがあり、そのうちのいくらかには無論毒が塗ってある。文化制限法なる規範がなぜ必要かということについての、これはなかなか適切な実例であった。

トバールのような各部族からガールが戦術を学習していることは語られており、仮にランディンから文化が流出すると取り返しのつかないことになる、という。これはハイン人類共通の強力な規範なのだが、本当に妥当で尊ばれることなのかや、ル・グイン作品以外ではどうか等は追々読もう。

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  • 7

    ル・グイン発だとはかぎらないけど影響力はあり、後発の世代の作家には無批判に踏襲することがあるのは知っている。

    宇宙文明モラルの他の例だと、宇宙に無造作にレプリケーターを播種・拡散してはいけない、のような規範も思い浮かぶ。グレッグ・イーガンを読んでいた頃に見たか。行く所の星系に乱脈に生命播種して周る文明という古典SFも多く、古い世代の作家ほどそういう規範を持たないということもある。

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    katka_yg 2025/05/06 (火) 22:11:58 修正 >> 7

    超未来なのに剣や弓矢で戦い、古式ゆかしい攻城戦をするアクション的な面白さの理由はいわずもがな。

    最近読んだ中ではジャック・ヴァンスの「奇跡なす者たち」など。……ヴァンスの50~60年代作品あたりに文化制限法のようなモラルはざっと見て思い当たらない。技術退行しているから未来兵器もないのは、今のテーマには当たらない。