「彼女は喪った魂を、彼らを救いたかった」
「人類を救うという崇高なる正義感を持っていたが」
「非人道的な行為を容認するような俺がその意思を継いだ」
「なんとも皮肉な話だ」
「翼の一つに成り上がり、翼と同じことをしている」
置かれたナイフを手先に納める。
そうして机に線をなぞるようにナイフを突きつけ始めた。
「心の外壁は、心の内側を守る」
「だが、決して光を与える事はなく、傷つく事さえ知らずに終える」
「お前も、似たような経験をしただろう」
「そして、俺の言葉を聞きながら、お前は俺の心の外壁を崩す為の言葉を形成しているはずだ」
「そんな打算的な考えで言葉を綴るような事はしませんよ」
「今まで逢った貴方たちもそうでしたが」
「俺に言葉を投げかけて欲しくて、ヒントを与えているように見える」
ユンフの言葉を聞き、アインは手元を止め、息を吐くように笑う。
「……」
「ユンフ、俺は数千、数万の職員たちの死を繰り返し」
「仲間の人生を奪い、苦しみを繰り返させていた」
「自分の目標を達成するという理由で全てを傍観したんだ」
「この罪は許されることはない」
「それでも……」
「貴方はやるしかない」
アインの言葉に続くように、そして彼が覚悟を決めて吐こうとしていた言葉を、
ユンフは代わりに口にした。
「……あぁ……」
「この数多の悪を通して、一度でもいい。円環の鎖を断つ」
「俺はいくらでも、なんでも背負っていく」
噛み締めるようにアインは言葉を投げる。
机から離れ、彼の前へと歩みを進める。
「俺の……管理人の役目は、ロボトミーのエネルギーを放出させ、光の種を植え付けること」
「人々に、種を植え付けるんだ」
「人間には誰しも、自分だけの光がある」
「俺達は植えるだけで、その後、どう発芽させていくかは、本人達次第だ」
「それが、真の意味で人類の病が治る瞬間」
「……ユンフ、お前はどうだったんだっけ」
彼の目の前で歩みを止め、小さな笑みを崩さず、僅かに首を傾げるアイン。
淀みなく見つめるその瞳に、彼は変色無き眼で返した。