カオスドラマX

Gray Traveller / 444

444
わったん 2025/12/28 (日) 21:27:47 >> 442

オーウェンの言葉が途切れる。
ユンフが成そうとしている現状は、奇しくもオーウェンが取りこぼさず成そうとした夢であったから。
大事な餌を守る過程に意味を成さないこの世界で、それさえ許される事無く牢獄に囚われた人間の憂鬱たる表情が、
彼の瞳に入りこむ。

「……都市に生き往く人々の中でも、そうして過程を拾い上げる人はいる」
「俺は、そんな人達と向き合って、此処まで物語の種を蒔いていくことが出来たから」
「貴方も本来、そうなんだと思う。オーウェンさん」
「そして、そうしようとL社の中で護ってきたんだろ」

コトリッと缶を床に置く。
楽な姿勢で腰かけていたものの、その瞳からはオーウェンの本質を理解しようとする渦巻があった。

「フッ、よ~~~くわかってんじゃねぇ~の」
「オーウェン検定1級の道は近いぜぇ?」
「……で、なんでそー思うわけよ」

「ティファレトさんが言っていた」
「貴方の幻想体を管理するその姿勢は、誰にも傷ついて欲しくないものだと」
「そして、貴方の祖父も言っていた」
「貴方は、誰も傷つける事のない人だと」
「L社という地獄の中でさえ」
「貴方は誰よりも優しく、誰よりも強く」
「誰よりも諦めずに居たと思う」

ユンフは懐から取り出した指輪を眺める。
最早遠い日だったかのような、懐かしささえ覚えるその金属に、湾曲した自身の顔が映る。
それはまたオーウェンも同じで、暗がりの中でさえ見えるその小さな鏡に向かって、小さく笑みを浮かべた。

「お前が思うその人物像ってのはな」
「地獄の中で迷い、憂い、絶望し、諦めた奴にしか味わえない希望みてぇなもんだろうな」

「貴方は正しく生きようとしている」
「……だが、ある人格は貴方をまた別角度で評した」
「地獄を受け入れ、適応して「しまった」と」

自傷するかのような呼吸。
姿勢を更に崩し、オーウェンは天井を仰ぎ見た。

「夢見てたんだよ」
「都市に生きていた頃と違って、俺ァここで正義を貫けることを」

その声色は普段通り明るかった。
だが、同時に少し影を落としていた。

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