「俺ァL社に入った頃の記憶が曖昧だ」
「だが、ループを自覚出来るようになった時のことは鮮明に覚えている」
「ある幻想体の収容違反を止めた時だった」
「助けたんだよ。あらゆる職員やオフィサーを」
「誰一人として欠ける事を許さず、死の行進を止めた」
「いやぁ~、あんときは気持ちがよかったなぁ~」
「いつか来るボーナスのことでも考えながら、俺ァ眠りについた」
「当たり前のように明日が来るはずだってな」
「だが、希望の明日はやってこず、訪れたのは希望の昨日だった」
「同じ会話をする俺の仲間」
「同じアナウンス」
「同じ管理方法」
「夢の中だと思ってな」
「いつも通り過ごした。いつも通り救えたんだよ」
「また眠りにつく」
「覚えのある昨日」
「……絶望に塗れた昨日を過ごす事になったさ……」
「……お陰で、絶望を引きづった明日を迎えられた……」
「光の種シナリオの弊害」
「名称は知らねぇけど、そうなんだろうな」
「だから俺は抗ったよ。俺を構成するこの肉体が、記録されているものだってことさえ認識した」
「台本の一部でしかない俺。主役じゃねぇだろうよ」
「だが、モブだからといって正義を主張しちゃいけねぇ道理はねぇ」
「身を引き裂きながら、全てを護りたかった」
「だが全ては無に還る」
「俺の成す事は、なんの意味も成さねぇ」
「だが、それでも俺は諦めることはしなかったよ」
「最善の正義は貫けずとも、俺の思う最高の生存率を常に更新した」
「……まさか……」
「一回事に、俺は職員を見殺しにしながら、多くを救う事にした」
「エラーが何度も耳を殺す」
「その度に、死者を増やし、最低限を見定める」
「正しさだけじゃ誰も生きていけねぇ世界」
「だからといってその正しさの振れ幅を小さくする訳にはいかねぇ」
「俺は、死に往く仲間たちの絡みつく残像を思い出しながら」
「明日を迎え続けた」
ユンフに視線を戻す。
その瞳に映るのは自身ではなく、過去に起きた出来事を追憶するような虚ろな記憶。
オーウェンが最善を取るために見捨てた、職員との記憶。