「ふっ、こうして礼を言われるのも何年振りだろうな」
「ったく、アイツら――」
「『わかりやすい照れ隠し』しやがって」
「――」
「クッ……クハハッッ!!」
「だぁーっははは!!!」
思わず自身の脚を叩きながら豪快に笑う。
「さてはハリーだな!?ったく、何処まで俺の事が好きなんだよ」
「おまけにその様子だと、アーリンも俺について話してたんだろうな!」
「どうりでくしゃみが止まんねぇわけだよ」
「雪の女王の決闘作業中並みにバカ寒かったのはそれが理由かよ!」
「……皆、貴方との思い出を持っている」
「確かに、もう手に取れる程、残っていない欠片かもしれない」
「それでも、貴方はそんな小さな欠片さえ集めようと、大事にしようと戦ってきたんだろ」
「この旅の終着点」
「そこに辿り着く迄は、言葉では言い表せないような苦痛が訪れる」
「だけど、その道中を乗り越えるには」
「そんな小さな欠片が、貴方の力になってくれるはずだ」
「喪い、砕け、奪われる」
「だが、その礎を記憶できるのは貴方だけ」
「……」
「そして、そんな貴方との記憶を語りつげるのも、俺だけです」
「オーウェンさん、貴方はこの地獄の中で最善を成そうと多くを考え抜いたと思う」
「そしてその上で、多くの犠牲を受け入れ、多くの感情と戦ってきたんだろう」
「背負う事が出来るのは貴方だけの戦いだ」
「背負う事が出来るものが限られている事も、過酷で苛烈で、本当に辛いことだと思う」
「だからこそ、やり遂げて欲しい」
「その過程で、確かに貴方を慕い、敬い、嫌ってくれている人たちの為にも」
「どうか最後まで、戦い抜いて欲しい」
「……」
「ったく、L社の物語ってのは俺達はお互いがイレギュラーなんだぜ?」
「だってのに、お前はその物語さえ美しく彩ろうって言うのかよ」
「俺には強く突き立てられた方向標がある」
「その過程が如何なる舞台であり、俺がどんな役であっても」
「俺という人間はその道を歩むただ一人の人間であるが故」
「だからその道の中で、貴方という人と会った小道でさえ」
「綺麗にしておきたいんだ。『楽しい道だったよ』って事も、伝えたい」
「そしたら、貴方の人生を少しでも彩れたんじゃないかって」
「俺の中で、貴方という存在をより良いものに出来るから」