「ユンフ、お前には感謝してるよ」
「正直複雑ではあんだけどな……」
「俺に多くの仲間と出会わせてくれた」
「いいか、これは俺の物語なんだ」
「俺が書く本には、大量の仲間の名前が綴られることになるぜ!」
「大作になること間違いなし!」
「ランク1時代の俺様物語から始まり、ランクEXの最強職員武勇伝!」
「極めつけは都市での物語でエピソード0!」
「んでもって……」
「お前の名前だって書くさ」
「――」
「お前だけじゃねぇぞー利己的な人間は」
「そして狂うんじゃねぇ、お前は見据えろ」
「方向標が突き立ってんだろ?迷い、憂うんじゃねぇ」
「その本質は何処までも、力強く」
「秩序さえ切り捨てる覚悟で突き進め」
「……ありがとう、オーウェンさん」
心の枷を取り除こうと、オーウェンはひたすらに笑った。
そうして笑みを浮かべた彼に、ユンフは指輪を取り出し、彼に差し出す。
「……持っていけるかも分かんねぇぞ?」
「貴方達が持つべきだ」
「貴方が取りこぼした欠片の一つ」
「大切な思い出だと思うから」
「ったく」
2つの指輪を受け取り、目の前で輪を見つめる。
常に不敵だった彼の表情は、子供のように柔らかく、そして純粋であった。
「爺さん、ただいま」
暗がりの空間の中、突如ユンフを包むように光が訪れる。
N社の時と同じ、転送を意味するものであった。
「ユンフ」
「頑張れよ」
「俺も頑張るからよ」
「――はい」
光が包み込まれる。
ユンフを形成していた粒子は潰え、その場に残ったのはオーウェンただ独り。
「……ったく……」
「やりきれねぇよな~……」
静謐な空間に、数多の呻き声が響いた。
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O-09-115の収容室。
転送された時と同じ空間に、彼は足を付けていた。
「……」
「ラモエ」
L社で紡いだ物語。
その収穫は、旅人の思い出と表された幻想体である『ラモエ』が存在していたこと。
「ケジメは付ける」
「――待ってな」
そして、彼はただ――
何処にも属さない地図の前で、立ち尽くしていた。