部屋の隅のベッド、患者とも呼べるその風貌。
病院の一室でしかないその空間。
『お見舞いかな』
『それとも……片付け?』
花瓶の内側で、淡く光る粒子が集まる。
その粒子は決して形を成す事はなかったが、声色に併せて表情を示しているようであった。
あくまで不完全な表情であり、完成しない標本のように曖昧なままだった。
「……」
「……」
「……」
水。空(から)。標本。技術。記録。消去。工場。病院。点滴。淡色。見舞。花瓶。
――憂鬱。
ユンフの感じ取ったねじれから発せられる大罪は、彼を強く縛り付ける。
深い水の中に入りこんだ感情。
沈んだが故に、深く深くまで入り込んだが故に、日の光さえ浴びる事の出来ない暗闇まで沈み込んだが故に、
その感情を浮き上がらせることは困難である。
この圧迫感は、一個人から放たれるにはとても重く、悲しいものであった。
「お見舞いに来ました」
ユンフは僅かとも長考とも言えない時を経て、ねじれと声を交わす。
『そっか。嬉しいな』
『でもお兄さん。嘘をつくのが下手だよね』
『お見舞いに来てくれたなら、お花は持ってきてもらわないと』
その語り口は穏やかで、
まるで自身に異常でもないかのような振舞であった。
「話し相手になる事も、見舞い品の一つと心得ています」
『うん、そうだね。お話は心の栄養だから』
ねじれの寝るベッドの横。
来客用の簡素なパイプ椅子に腰かけ、ユンフは相も変らぬ瞳をねじれに向け続けた。
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