カオスドラマX

Gray Traveller / 461

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わったん 2026/01/11 (日) 19:03:54 >> 458

「なんとお呼びすれば?」

『僕は標本。技術の結晶なんだ』
『人としての名前はもう遠い昔に無くなってしまった』
『……だから、『空の花瓶』と、そう命名されたんだろうね』

「それは美しい声が導いた命名ですか」

『きっとそうだと思う』
『僕はその声を皮切りに、以来誰とも話す事さえ叶わなかったから』

自傷的な笑みを浮かべている。
決して形としてその表情が彩られた訳ではなかったが、
彼には空の花瓶がそうしたと捉えざるおえなかった。

『あなたは?』

「ユンフです」

『ここは病院だった』
『正確には、病院に「なろうとした」工場かな』
『治せない人を、せめて壊れないように保管する場所』

管の一本が、きしりと音を立てる。
ユンフはこの道中にて、保存のために残されたような器具達を思い返した。
この工場は、治療の場ではない。
延命と保管を目的とした施設。
都市の技術が発展に基づく、闇の根幹に成り得る施設。

『患者のフリした研究対象』
『僕に注ぎ込まれた技術の多くは、きっとこの先多くの人の生活を支える技術になる』
『だから僕は不幸なんかじゃない。多くの人の足場になって、僕の存在意義に意味が灯される』

俺は幸せになれない

「……」

且つて対峙した者の過去の記憶。
ねじれる寸前、不幸を提示した男とは逆に、空の花瓶は幸福であるが故にねじれた事を示唆していた。

「だが、貴方を纏うその哀しみは『憂鬱』そのものだ」

『……そうだね』
『空っぽだからかな』
『誰も、ここに花を挿すことはなかった』
『頑張ったけど、報われなかったなって』
『そしてその証はもう、消し去られる』
『……ユンフさん、貴方の依頼って、僕の消去でしょ?』
『答える必要はないよ』
『貴方は一目見てわかるぐらいに優しい人だから、それを答えさせるには僕が罪悪感を抱いてしまう』

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