カオスドラマX

Gray Traveller / 465

465
わったん 2026/01/11 (日) 19:05:19 >> 462

研究が終わる頃、僕の周りにいた研究員の多くが姿を消していた。
僕は学会とか、そういう偉い人達に発表する為に必要な会議とかしているものだと思ったけど、
実際は違かったみたいだ。
施設は静まり返り、機械と電子の音が混ざるだけ。
役目を終える頃だったから、僕は思った。
誰かが来てくれるって。
「お疲れ様」と言ってくれる誰かが。
花を持って、
役目を終える僕を見舞ってくれる誰かが。


誰も来なかった。


誰一人として、役目に準じた僕に声を掛けてくれる人は、居なかった。


都市を覆う白、そして黒の世界が訪れた。
工場は機能せず、折れた翼の定めとして阿鼻叫喚が繰り広げられた。
施設から人は消え、僕は衰弱し続けた。死ぬのも時間の問題だったね。
内臓を求めにやってくるねずみや、縄張りとして占拠しようとする組織。
色々な人が来た。その度に息を潜めて、隠れて、でも遠くには逃げられず、ずっとここに居た。
ある日見つかった時、刃が僕を貫こうとした時に聞こえたんだ。
その声はとても優しくて、美しくて、僕を必要としてくれるような太陽のような声で。
そしたら、目の前にいた人達は居なくなっていた。
代わりに、僕の姿が変わったんだろうなって思った。


その時、初めて理解した。
僕は、空っぽだった。
役割を果たすために、
自分を削り続けた結果、
中身の無い器になっていた。
花を挿す場所だけが残り、
そこに何も入れられることはなかった。

それでも、
後悔はなかった。
僕は確かに、幸せだった。
誰かの役に立てた。
それだけで、十分だった。

――だからこそ。
終わりが欲しかった。
空の花瓶は、
棚に戻されるべきだと、
そう思ったんだ。


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