彼が来てから幾数週間が経った。
俺の進める技術生産は滞りなく、旧個体となってしまったあらゆる患者からアンプルを抽出する事。
それは患者の廃棄を意味するものであり、最初は嫌悪塗れのものであったが、今となっては慣れたものだった。
だがここ数日、旧個体の抽出作業がやけに増加した。
普段の管理状況であれば、決してあり得ない数値を叩き出した。
「ニゲラ、ちょっといいですか」
研究員に呼ばれたのは、彼の病室。
多くの研究員が挙って治癒の途中結果の張り出された資料を眺め、
その数値に指を示す。
遠目に見えたその数値の項目は、「再生医療技術項目」
「新個体N381」
「例の治癒被検者ですが」
「再生医療用のアンプルに素晴らしい数値を叩き出しました」
「これは我々の研究がより神秘に達する異例の実験体になります」
目を輝かせる訳でもなく、淡々と事実を述べる同僚。
だがそのアンプルによる数値を示す物は彼の完治への道ではなく
「――」
「――」
「――実験段階のアンプルを、投与したのか……?」
研究対象として良好なモルモットである数値であった。
ベッドに固定された身体。
皮膚の下を走る管。
輸液ポンプの規則正しい音。
その中枢で彼は息をしていた。
生きていた。
俺は確かに、この生命を治す為の提示をしたはずだった。
だが、此処にいる連中は挙ってその生命を研究素材として見る目に変化していた。
「――!」
痛みに耐えながら、笑みを浮かべる少年の姿が見えた。
その笑みは、俺達の本質を理解しながら、自身の在り方を見つけたモルモットの笑みだった。
その日、俺は初めて吐いた。
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