「透明の軌跡、お前は俺に方向標を示すと言ったな」
「それは結局、この後悔を抱いた俺を、彼に会わせるという最悪のシナリオのことだろう」
「お前が示したその道は、俺にとって歩く事さえ叶わない絶壁で覆われている」
「それでも、あの子に会えと言えるのか」
歯を食いしばりながら吐き出された言葉。
それは問いというより、拒絶の最終確認だった。
目を僅かに開き、目の前の後悔に縛られた男を瞳に納める。
彼は、幾度となく開いてきたその口から、言葉を紡ぎ始めた。
「俺が示す方向標は、貴方が思うような優しいものじゃない」
「俺は、彼に会う道を、貴方に提示している訳じゃないんです」
声色は変わらない。一切の濁りも無く。
慰めでも叱責でもない、ただ俯瞰的な彼の言葉。
「……何……?」
「貴方が立っているその場所は、"選択"の前じゃない」
「既に終わった選択の残骸の上だ」
「だから、絶壁に見える」
「……言葉遊びはやめろ」
「絶壁があるから会えないんじゃない」
「貴方は、その壁と向き合ってみればいい」
「扉があるはずだ」
「その絶壁には、あの子に会うための扉が」
「……いいや……」
「俺には資格がない」
「あの子の全てを奪った」
「存在を歪めた」
「その結果が、あの姿だ」
「なら、俺はその扉を開くことさえ赦されないだろうが……」
「えぇ、きっと赦されない」
「その通りだと思う」
ユンフの言葉には、残酷な程、静謐な肯定があった。
その俯瞰した肯定を受けて、ニゲラの口角が僅かに落ちる。
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