「貴方は、彼と向き合わなかった」
「同時に、彼の笑顔を求めた」
「その中途半端さを、都市は罪とも善とも呼ばないだろう」
「……呼ばないからこそ、その地点からは、貴方が歩むんだ」
風が吹き抜け、霧が揺らぐ。
遠くで金属が擦れる音がし、都市がまだ生きていることを告げていた。
「……それは、救いじゃないだろ……」
「ええ」
「だから前向きになれるんだ」
「救われたと錯覚しない分、足は地面についている」
ニゲラは、ゆっくりと息を吐いた。
胸に溜まっていたものが、完全には抜けないまま、形を変えて流れ出る。
「……俺は、後悔を消したかった」
「消えません」
「形を変えるだけです」
「記録を焼いても、技術を壊しても、存在を消しても」
「後悔は、"次の行動"に姿を変える」
「……それが、俺の罪か」
「そう捉えるのもいいけど」
「それは俺と似すぎているかな」
ユンフは首を横に振った。
「罪じゃなく、それが貴方達がまだ生きている証拠だ」
ニゲラは、言葉を失ったまま立ち尽くす。
霧の向こうで、僅かな光が揺れていた。
それは希望と呼ぶには弱く、絶望と呼ぶには遠い。
「最終的にどうするかは貴方が決めることだ」
「だが、消えるという選択だけは塞がせてもらおうか」
「……それは、彼も望んでいないから」
その言葉は、救済でも命令でもなかった。
ただ、進行方向だった。
「――」
「俺はツヴァイ協会直属である黒霧事務所、そして其処と提携関係だったガンパウダー工房フィクサー」
「護衛を格安で受ける」
「思い出を抱えていくフィクサーです」
「さて、こんなにも適任なフィクサーが目の前に居るんですから」
「あとはどうすべきなんでしょうね」
「……」
「……透明の軌跡」
「頼む、俺を、あの病院にまで連れて行ってくれ」
「未来に歩む為に」
「扉を開けたい」
「勿論」