カオスドラマX

Gray Traveller / 490

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わったん 2026/02/01 (日) 20:42:11 >> 488

廊下は酷く静まり返り、機械音も、人の気配もない。
だが、完全な無音ではない。
過去、自身が製造した技術の痕。
過去、自身が築き上げた覚悟の痕。
過去、自身が成した後悔の痕。

「……」

病室に繋がる廊下の奥底。
且つて彼が立ち尽くした、後悔の焼け跡。

「ニゲラさん、貴方が見据えるべき場所は其処じゃない」

ユンフは一歩前に出て、
ニゲラの視線を遮るように、
その“嘗ての地点”を身体で塞いだ。

「……そうだったな……」

小さく、掠れた声。
そうして、ニゲラは歩き出す。

「……」

彼の背後で、ユンフは一瞬だけ、その悔恨の痕へと視線を向ける。
微細な違和感。
言語化する前に、視線を戻した。

「……」

ニゲラは病室の前に立つ。遅れてユンフもまた、彼の後ろで歩みを止めた。
扉の前に立つと、病院の空気が変わった。
霧が薄れる代わりに、消毒液と金属が混ざった、記憶を直接刺激する匂いが支配する。

「……」

ドアプレートには、掠れた文字。番号。
かつては個体名が記されていたであろう、その痕跡。
手が扉に伸びる。
だが、触れる直前で止まる。

「……」

病室の引き戸に額スレスレになるほど、接近して立ち尽くす。
過去と同じ、邂逅前の恐怖。
だが、それは昔とは異なった。
過去のニゲラは、彼に会いにきた訳ではなかった。
だが今は違う。
会う為に、この扉に手を掛けようとしている。

「……ッ」

それでも、ニゲラの手は震えを止める事は出来ず、カタカタとその場で振動するだけであった。
自身の情けなさに歯を食いしばり、ただ時が流れる。
そんな彼を、ユンフはただ後方で眺めるだけ。

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