「……君の笑顔は、都市の未来よりも護られるべきものだった」
「少なからず、俺はそうだと思ったんだ」
「君の役割は、都市の未来だったんだろう」
「でも違う」
「俺にとって、君の役割は」
「俺の心を照らし、都市の人間として欠如していた感情を取り戻す希望」
「『俺の未来』」
「止めるべきだった判断、俺の未来を護るための判断が出来なかった事」
「忘れられなかった記憶、結局俺は且つての仲間達さえ消し去って、君が与えられた役割を奪ってしまった」
「……言葉で紡ぐだけでは、決して赦されるものではない、わかっている」
「……それでも、言えなかった後悔は、したくないんだ……」
「……ごめんよ……」
『……』
『……』
『……』
『……ふふふ、想いの言葉が凄く長いや』
微かな笑声。
それは空気を緩めるものではなく、
沈黙に人の温度を与える音だった。
「……すまない……」
『それは、何に対して?』
「……」
「初めまして、と言えていなかった事に対して……」
『ニゲラさん、僕達はお互いに言葉を交わすことはなかったかもしれないけど』
『僕は、貴方から想いを受け取っていたよ』
「……?」
『治癒シーケンスへの移行を意見したのは、ニゲラさんだって』
『僕という標本に書いてある技術の一つを提示した人が言ってたんだ』
『それはきっと、貴方からの初めまして』
『僕という存在に役割を与えてくれた、かけがえのない人』
「……」
「……ただの気紛れだったんだ……」
「技術の証明を謳う為の研究員としての矜持でしかなかった」
「俺の初めましては、君という存在に対して決して誠実なんかじゃなかった……」
『誠実じゃなかったのはその後だよ』
『確かに僕は、研究対象としての道を歩む事になったけど』
『僕はずっと待っていたんだ』
『僕という標本に、貴方の言葉を記したかったのに』
『僕という役割が、貴方の想いを紡ぎたかったのに』
『僕という存在を、貴方が形成してくれたのに』
「……すまない……」
『……ニゲラさん』
『……僕はね、生きている間に』
『貴方との思い出を作りたかったんだ』