『うぉい!!!存在論的問いを無視するな!!!!』
『何勝手にご利用なさってやがんだ!?!?』
「無視していない」
「処理していないだけ」
『し、処理?』
「優先度が低い」
「貴方がさっきから並べた言葉」
「恐らく俺から察知出来た『怠惰』に当たる部分を直感的に練ったんだろうけど」
「どうにも俺の本質まで辿り着けていなかったんだ」
「だから……喉乾いたし、買っちゃおうかなと」
『《ERROR: 優先度評価基準不明》』
『ちょいちょい!!当機からの有難いお言葉を軽視するな!!』
「人の言葉に俺は重さを問うつもりはないけれど」
「俺の感情に於いて優劣を測るのは悪手だったよ」
『だからといって喉乾いただけで押すやつがあるか!?』
「自販機だろ、そりゃ押すよ」
『それは生理的欲求による一時的判断であり!!!』
「そうだ、だから今優先されている事」
音声合成が、微妙にノイズを含み始める。
『貴方様は当機の提示した概念を日常行為で上書きしようというのですか!?』
「別にそんな大層なことしようと思ってない」
「ただ参照していないだけ」
『_▁▂▃▅▆▇█▓▒💢💢💢💢』
自販機の表示が高速で切り替わる。
哲学者の名前や数式、倫理モデル。
表示は意味を伝える速度を放棄していた。
理解されるためではなく、
圧倒するためだけに並べられた知識群だった。
あらゆる学問に関する表記が成され、同時に点滅し、収束することがなかった。
「しょうがないだろ」
「俺は既に飲んだ空き缶をゴミ箱に捨てたかっただけなのに」
「急に『嫉妬』の絡んだねじれに勝手に診断されたんだから」
内部演算が限界に達したように、自販機が激しく振動を始める。
冷却音が悲鳴に変わる。
本来、沈黙の中で行われるはずの計算が、
すべて外に漏れ出していた。
『💢💢💢💢』
『💢💢💢💢💢💢💢💢』
『💢💢💢💢💢💢💢💢💢💢💢💢』
「💢‼️‼️」
