カオスドラマX

Gray Traveller / 511

613 コメント
views
511
わったん 2026/02/22 (日) 19:54:25 >> 506

遠くで子供たちが幸せを奏でる。
見守る親たちもまた、静かに微笑む。
この風景を見たのは何度目か。
いつしかL社の巣に囚われた、あの老人が佇む光景。
幻想の類。

「……」

だが同時に、目の前にある看板の質量が、都市に存在する嘗ての故郷を証明していた。
希望という畑で燦々と生き続けたクラヴァットの歴史。
優しくも力強い思い出の日々を、長閑な風景の空気に浸透させた家々。
その全てが、彼にとっては絶望の園として映ったあの日。
あの時とは確かに異なる、『生きていたティダの村』が、目の前にあった。

「……」
「……」
「……」

旅の一頁に飾った悲しき思い出を前に、彼は推察に奔る。
都市という枠組みに於いて、故郷を彩る事が出来るのは自分、乃至はラモエを以て他はないはず。
『ティダ』という嘗ての幻想が発現している事は、その両者どちらかに原因がある。
図書館の出現、実体化していくL社の魔境、ラモエの存在。

「……」

思考を取り止める。
看板と、既視感のある風景、子供の発言だけでは、確実な事は得られない。
彼は嘗ての歴史を、都市の出で立ちで歩み始める。

通報 ...