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「あぁ、それよりユンフ。馬車は直せるか?」
「どうやら車軸がイカれちまっているらしいんだが」
遠くで会話をしていた村人もまた、ユンフに視線を送っている。
彼は、自身の中で渦巻く感情に対する問いを抑え、小さく頷いた。
そうして馬車の前まで行き、傾いたその車体を眺める。
嘗て自身が旅人として世界に思い出の種を蒔いた、あの風景。
荷台に視線を映す。
「……」
心に寄り添う少女の笑顔を思い浮かべる。
その風景を思い浮かべる事が容易な程、この馬車は自身の思い出に存在するものに似通っていた。
「……」
腰を落とし、地面に背を向けて馬車の下に半身を潜り込ませる。
原因をすぐに理解すると、片手だけを馬車下からはみ出させて掌を広げた。
「連結部分が歪んでました」
「軸穴の補強をするので、道具を」
「頼りになんなぁユンフ!」
僅かな時が過ぎ、土埃にやや汚れたユンフが馬車を眺める。
先まで傾いていた馬車は均一を保ち、安定した立ち振る舞いとなっていた。
「ありがとう、これで明日は麦をまた運べるよ」
「ティダの村の人々は、農村を紡いでいたんですね」
「ん?あぁ、ジュゴン川が流れるようになって、ファム大農場が出来ただろ」
「その歴史を持ってきた人の思い出を、俺達がしっかり受け継いでいるって訳よ」
「それがこれほどの麦畑を築き上げたわけですか」
「あぁ、そんな俺達を護ってくれるクリスタルキャラバンの連中には頭が上がらんもんよ」
「……その人たちは、今はどちらに?」
「……俺達の思い出の中にいるよ」
「あぁ、そうさな。ただ村長は違うだろうな……」
「奥に見えるビル群。あそこを登っていけば居るよ」
「ったく、都市とは関係ない連中だってのに、どうしてあんなビルにいるんだろうな!」
「……ビルに向かうのかい?」
「はい」
「……じゃあ、その向かう途中で、色々見て行っておくれ」
「そうすりゃ、きっと村長も喜ぶよ」
「……ありがとうございます」
ユンフは一礼し、街路につく。
その足先は、ティダの村と称するには異常な風景である、ビルの方へと向かっていた。