カオスドラマX

Gray Traveller / 516

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わったん 2026/02/22 (日) 19:56:20 >> 512

夕焼けが差す前の日中。
彼は常に黄金に輝く街並みを横目に、都市とは異なる空気の音色を感じていた。
やはり、嘗ての思い出に通ずる匂い。

「……」

はやく帰りたい。
そう願う、表には出さない大きな欲望。
その願いを孕んだまま、歩く最中。

「~♪」

嘗て、自身に枷さえ強いておきながら、
自身の感情に付き従う事も出来た音色が、彼の耳を刺激した。

「――」

麦畑の隅。
円状に纏められたロールベールの上で、鼻唄を口ずさむ女性が上機嫌に足を揺らしていた。

「~♪」
「……あら、お客さん?ようそこ、希望のつどう村へ~」

彼に気づいた女性は、鼻唄をやめても尚、何処か飄々とした機嫌の良さで笑みを見せた。

「……」
「水かけ祭りの音色」

「そう。ミルラのしずくが集まった事を祝した希望の音楽」
「村の人々は怯えず、また優しい日々を送れる希望の歌」
「これが好きなの、私」
「ね、すぐわかったって事は、貴方もそうなんでしょ?」

「……」

「あら?違ったかしら」

「大半は憂鬱に沈み往く『僕』の独りよがりな時間でした」

「じゃあ途中からは『俺』になった、みたいな?」

「勘のいい人ですね」

「そりゃそうよ」
「なんたって、このティダに希望を届けてくれるキャラバンに身を挺してくれた」
「セルキーの人、ラ・セナに憧れているんだから」

「……」

「あら、セルキー族には厳しい感じ?」

「しましまリンゴや……ルダの村ではギルを盗まれたものでして」

「あはは、『我』の民って感じだよね」
「でも、ラ・セナはそんなことしないよ」
「彼女は帰ってくるたびに、ミルラのしずくだけじゃなくて」
「皆に希望を持ち帰っていたのよ」

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