カオスドラマX

Gray Traveller / 519

519
わったん 2026/02/22 (日) 19:57:08 >> 512

「ふむ」
「旅路に意味を成すは、世界の命運などではない」
「その暖かさを享受した者への感謝か」

「俺の成せなかった事を、これから成せるようにするための旅路です」
「その旅路の終着点に辿り着く事こそが、彼女に示す感謝足り得る」

「ハハハ、すまんな」
「どうやらお主の喋り方を束縛してしまったようだ」
「なるほど。感謝という言葉だけで表現するには」
「あまりにも壮大で、慈愛に満ちて、心弾む物語か」

「……」
「長生きされている中で、貴方の旅路は如何なものでしょうか」
「都市の枠組みの中で生き永らえ、現在は異世界の影響下に翻弄されることになる」

「それもまた運命」
「私もまた、私以外の一つの人生を大きく見てきた」
「トルブジータと呼ばれる、智に邁進せし者の記憶だ」
「そう。諦観しないこと」
「達観する事こそ、夜空の欠片に手を伸ばせるきっかけになる」

「……」
「『智』の民らしい、迂回した表現だよ」

「お主程ではなかろうて」

「俺は感情に沿って言葉を投げかけています」
「その上で直接的な表現を敢えて心の奥底にしまうのは、贖罪の時ではないから」
「……トルブジータさんは、読書がお好きだったんでしょうか」

「あぁ、厚ければ厚い程、その知識の情熱は燃え滾る」
「いつかは自身の身長を超える本を読みたいとさえ思っていたらしい」

「中身を問わないのであれば」
「次世代にまで紡いで、物語の本を描くことが出来たら」
「ユーク族の身の丈を超える本は書けそうです」

「おぉ、言うではないか」
「なら、是非とも記してくれ」
「お主はきっと、最後まで筆を執り続けることが出来ると、信じておる」

ユークの人物像を語る老人。
その知的で、落ち着いた雰囲気は、まさしくユーク族が放つ不思議な雰囲気そのものであった。
紡いできた知識の頁があるからこそ、その糧となった『思い出』をその者は放っていた。
ユンフは一つ挨拶を終え、再び街路を歩んだ。

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