レベナ平原での道中。
砂糖をぶちまけたみたいな星空の真ん中に、大きな月が浮かんでいた。
月夜に照らされながら、焚火を囲み、クリスタルケージを脇に管理する。
パパオパマスは疲れ果て、その巨体を横に倒して休んでいた。
「コナル・クルハ湿原のあの立地はどうなってんだろうな」
「どう考えたって人が寄り付くところじゃねーぞ」
「あの地は嘗て古代セルキー族が訪問せし湿原」
「瘴気の沼にさえ恐れず、我を貫き通さんが為に橋を渡した聖地」
「されど、その最果てに在りしは無だったとされる」
「理想の地であることを信じて、最果てへと向かった歴史か」
「道中の石板は古代セルキー文字……だったんだっけ?」
「然り。あの石碑に刻まれし表現技法は、我が書物には無き夜空の星」
「故、ラ・セナ女史に読み解く事を進ぜたが……」
小岩に腰かけ、鼻唄を交えて左右に揺れるラ・セナに視線が向く。
その言葉と視線が向けられた時、彼女は「ん?」と動きを止め、わざとらしく肩を竦めた。
「『内容は秘匿とする』とのこと」
「声真似似てねーぞ」
「善きなり」
「なんで?」
「読めはしたんだろ、ラ・セナ」
「そんなに悲惨な内容だったのか?」
「もうアンタたちだって分かってることでしょ」
「最果ての地に理想がある事を信じて疑わず、セルキーの民は我を通した」
「その結果があの石碑を残す事だったの」
「ただ残っただけ。見つけられなかったものを嘆く事もなく――」
「……ねぇ、もうやめにしていい?」
ラ・セナの言葉尻が一気に萎む。
俺達三人はそれぞれ謝罪を口にして、彼女の快活が喪われた事に責任感を覚えた。
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