「レビ。アンタはどうなの」
「我慢、してんじゃない?」
「……俺が?なんで急に」
「テトのことよ」
「傍に居てあげたかったんじゃないの」
ラ・セナの何とも言えない笑みに、俺は即座に答えることは出来なかった。
あの時、テトを置いていくことを選択した。
俺はクリスタルキャラバンであり、村を護っていかなければならない。
だが、同時に一人の父親として、家族を護っていかなければならない。
身籠った彼女を差し置いて、俺は旅する事を選んだ。
俺も共に残る選択だってあった。
彼女を連れて旅をする事も、選択としては存在していた。
だが、俺は彼女を置いていくことを選んだ。
それは、俺がまだ旅をして……
「お前達との思い出を、作っておきたかったんだ」
「俺は、お前達が好きだから」
我慢や嘘。俺にもほぼ無縁なものだった。
だが、大人になっていくにつれ、あらゆる選択は選択として機能しなくなる。
だからこそ、父親になる瞬間が訪れる前に、
まだお前たちの前で、ガキで居たかったんだ。
「……そう」
ラ・セナは俯くように笑い、小岩から離れて焚火に近づいた。
腰を下ろし、4人で顔を照らし合う。
「なら、最後までいい思い出にしないと」
「そうして、この旅をアタシは石碑に刻む」
「アンタの子供に読んでもらう為にね」
「俺の子に、古代セルキー文字を読めるように仕込んでくれるか?」
「アタシってセンセーって感じしなくない?まぁいいんだけど!」
「トンベリぐらいノロノロなペースだけど、教えてあげる」
なんだろうな。
俺の事ではないんだけど、自分のことのような楽しみが増えた。
俺の子を通して、ラ・セナがティダの村で変わらず過ごしてくれる。
そんな気がして、心底ホッとした。
そんな未来がもうすぐ来るんだと思うと
「尚更、ミルラのしずくは持ち帰らなくちゃな」
帰るのが待ち遠しい。