カオスドラマX

Gray Traveller / 562

613 コメント
views
562
わったん 2026/04/05 (日) 22:07:01 >> 556

「――そうか。尚も立ち上がるか」
「それほどの活力を見せし者程、崩れ落ち往く様は美しい」
「なればなけなしのキサマの思い出を――」
「……」
「……ふむ」
「帰りたいか?自尊心をも捨て、己の旅路さえ捨て」
「故郷に帰りたい。そう願うか?」

希望を、持ち帰らなければならない。
俺は一人の人間として旅をしてきた。
だが、今は違う。
もうクリスタルキャラバンとしての使命を担い、
父親としてあの村に帰らなければならない。
そう思うが故に――。

「み……のがし……てくれ……」
「たの……む……」

仲間達の死は、俺を酷く変貌させてしまった。
あらゆる困難に立ち向かい、出来ないと思った事さえやり遂げる。
それは俺の中枢にあったものであり、決して変える事の出来ない核だと思っていた。
だが、その核は崩れ去り、自身の抱く理想を捨て、感情を殺して、
この邪悪に命乞いをしなければならなかった。

「よかろう」
「このラモエ、キサマに最大の恩情をかけよう」
「だが……キサマがミオ様から貰ったしずくは、我が供物として貰い受ける」

「な……」

「我が聖域からキサマを追いやる」
「もう二度とこの地に足を踏み入れることもない」
「せいぜい、哀しみに満ちた思い出を紡いでいけ」


満身創痍となった俺の身体が打ち捨てられたのは、瀕死となったメテオパラサイトの前。
剣を握る力さえままならず、付近のケージのほんの僅かな光に当てられながら周囲を見渡す。
……仲間の亡骸は、存在しなかった……。
埋葬さえ赦されない、嗜虐の心得。
それに従う他なかった、自身の無力ささえ、最早感じる事はなかった。
ただ、涙が溢れる。
辛く、険しく、立ち直れない程の哀しみ。
俺にはわからない。
今、俺の目の前にあるケアルの魔石。
仲間の意志が俺に答えてくれたものなのか、
ラモエがバカにするかのように置いたものなのか。
俺はもう、その情緒さえどうでもよくなっていて

「――ッッッッッッ!!!!!!」

ただ拳を握りしめて、空に等しいケージの横で叫ぶだけだった。

通報 ...