ケアルの魔石で自身を癒す。
この時、俺は心を癒せる魔法があればとどれ程願っただろうか。
そして同時に、辛い記憶を消去する魔法さえ望んだ。
「……」
それでも、ケージに籠った嘗ての温もりが、
俺に僅かな冷静さを保とうと声をかける。
「……」
瀕死のメテオパラサイトに視線を向ける。
今此処で、剣を奴に突き立てること。
それが世界を救う事であり、希望を届ける事。
だが、勝てる保障はない。
ラモエの存在は、俺にとって心根の深くにまで恐怖を突き立てており、
俺は何よりも、俺にとって大切なものをこれ以上喪いたくなかった。
一刻も早く、このラモエに奪われたミルラのしずくを集め直さなければならない。
ティダの村を護らなければならない。
だから、俺は保身に走った。
「……帰らなくちゃ……」
力無くケージを抱える。
治したはずの脚は、ただ焦燥に駆られて傷を隠し続けた。
一人でミルラのしずくを集める。
ティダの村のクリスタルの輝きが潰えるまで、あと一ヶ月。
ただ我武者羅になるだけであった。
俺は故郷の存続をかけて、身体の傷を、心の傷を無視して一人で奔走せねばならなかった。
デーモンズコートの入り口。
「……」
仲間の居ないキャラバン。
俺は、この孤独の中。
「はぁ……!くっ……!」
一人でダンジョンを攻略する。
襲いかかる魔物の数々。
「ちっ!ミルド=デリス、スイッチ――」
亡き者へ声を掛ける。
感情として芽生えるのは、哀しみだけ。
ズシャッ!
「あがっ……!」
「――クソったれが……!」
ガッ!
「トルブジータ、ケアルを――」
「――」
「――」
「ケアル」
分かっているのに、追い求める。
「橋を下ろさなければ……」
「ラ・セナ、登って――」
「――」
「――」
「迂回……しなければ……」
孤独の中、突き進む。
通報 ...