カオスドラマX

Gray Traveller / 570

570
わったん 2026/04/12 (日) 19:05:20 >> 569

ゴオオオオオッッッ!

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吹き荒ぶ雷雲。
空を裂く白が一閃し、遅れて轟音が大地を叩く。
空気そのものが震え、肺の奥まで押し込まれるような圧力が襲いかかる。
風は荒れ、雨は叩きつけるように降りつけ、視界は断片的にしか保てない。
色無き世界を更に暗闇へと誘うその轟音は、大平原で帰路に辿る俺にとって絶望そのものであった。
大平原。帰路。
その単語すら、今は意味を持たない。
ファム大農場に続く行路の最中、俺は遠方に見える川――本来、あった場所の氾濫が目に入る。
眼下では、川がすでに「川」と呼べるものではなくなっていたんだ。
本来であれば、メタルマイン丘陵に繋がるジェゴン川の舟渡で航路を辿ればいいものの、
この嵐の中で水路を辿るのは自殺行為に過ぎない。
濁流が土を削り、木々を引き抜き、何もかもを呑み込んでいく。
水面は荒れ狂い、波と渦がぶつかり合いながら、境界を失ったまま広がっていた。
流路という概念を捨て、ただ低きへと流れ落ちる質量の塊。
水は流れていない。
地形ごと、世界ごと、押し流している。
濁流が土を削り、木々を引き抜き、岩を転がし、
あらゆる境界を破壊していく。
水面は存在しない。
あるのは、絶えず形を変える落下の連続。
踏み込めば、終わる。
考えるまでもなく理解できる。
普段なら渡れるはずの距離は、今や断絶だ。
足を踏み入れれば、瞬く間に引きずり込まれる。

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