カオスドラマX

Gray Traveller / 576

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わったん 2026/04/12 (日) 19:10:23 >> 569

「……」

身体を横にしたかった。
しずくが溜まった時、後は陸路に沿ってティダへと帰る為の算段を立てるだけになった。
休んで居られない。しずくを回収して、即座に移動しようとした時。

バサッ……バサッ……!

強風が吹き荒ぶ中、力強く聞こえる重力と羽根の音。
暗雲の中でも分かる、影の大きさ。
俺はその音のなる方を見上げ、僅かに残った喉の力で呟く。

「グリフォン……」

ヴェオ・ル水門に澄み付くグリフォン。
嘗て仲間達と共に相手取った巨大な魔物。
その狩人は、強風の中でさえも地に足を付く事はなく、
獰猛なる瞳を以てして、爪を光らせながら俺を狙っていた。
手元の魔石でグラビデを扱う事は出来ない。
ましてや、その後に急所を突くだけの機動力も、俺には無かった。
重なる絶望に、乾いた笑みさえ出てくる。

「――諦めっかよ……」
「かかって……こいや……」

震える手元で剣を抜く。
ケージを脇に抱えながら、その剣先を巨大な魔物へと向け続ける。
最早虚勢だけで、俺は戦意を示す。
だが魔物とは、そんな虚勢が通じる程、感情に長けた者ではない。

「――ッ!」

強風で力の入らない手元、立つのもやっとの脚を狙う、狩人の攻撃。
剣が弾け、肉を裂く。血は風に乗り、雨で流される。

「クソ……!クソ!!!!」

ただ、悔しかった。
しずくを集め、あとは帰るだけだというのに。
目の前に飛び立つ絶望は、嘗ての仲間と共に倒せた壁だったというのに。

ここまで来て。

あと一歩で。

それでも届かない。

一人では。

何も出来ない。

ただ終わってしまうその時の中で、
抗う事も出来ず……命が削られていく様に……。

「クソァァァァアアア!!!!」

奴の魂ごと削るような、鋭利な爪先が俺を襲う。
それでも、俺はケージだけは護り抜く為に、身を縮めた。

ドガァッ!

強烈な引き裂きが、俺の身体を宙へと飛ばす。
落下し始めたその先、氾濫しきった川の中へと突き落とされる俺の身体は、
無意識下に於いてただ命令を続行していた。ケージだけは離さないという、使命を。

ザバァッ!!

「――テト――」

先に乗り越えた試練の中、俺の意識は消えながら、
濁流の流れに呑まれていった。

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