「それで瘴気ストリームを超えてきたのか……」
「とんだバカじゃねぇか……」
「……俺に、何の用だ……牛飼いの旦那に剣を返すってんなら、今返すよ……」
「ううん、これ」
差し出されたのは、ケアルの魔石。
「……落としたもんだって言っただろ……」
「返す必要ない」
「拾ったから私達のもの」
「だから、あげます」
「……何故……?」
「上手く言えないけど、これが私たちの思い出になったから」
「おにいさんに、大切にしてほしかったんです」
「ただの気紛れ、それも処置しきらず、故郷の為にさっさと逃げるために置いてった魔石だぞ」
「故郷に急いでいるのに、渡してくれた魔石なんだよ」
「傷ついちゃうかもしれないのに、私達にくれたんだよ」
「それって、私達に無事に帰って欲しいからでしょ?」
「僕の傷、あのままだともうだめで……諦めてたんです」
「せめて、一欠けらのしずくだけでも届けようって思ったのに」
「……」
察するところ、少年の怪我を心配した少女。
その怪我を治す為のケアルを持たず、村に行こうにもしずくを手放せず、
少年も身動きが取れない状況。
その中で、最早諦観して留まっていたという話。
「……」
「……やはり、君達のキャラバンは……」
「『失敗』したのか……」
気づこうとしなかった話を、口にする。
力無く笑う少女と、泣きそうになりながらも頷く少年。
「音信不通になったキャラバンの後釜として、頑張ろうって話になったんです」
「村に残っている人は、他の村に移住するなり、色々あったんだけど」
「子供にそんなことさせられないって怒っちゃって」
「勝手に飛び出してきたんです」
「でも、しずくは結局一個しか集められなかった」
「余命が増えるだけの、ちょっとした希望」
「それでも、届けたかったの」
「……」
「残り少ない時間」
「だったら、おにいさんに貰った思い出を、私たちの死で止めるんじゃなくて」
「おにいさんに紡いで欲しかったの」
「……」
「知ってるだろ……もう、俺は紡ぐ場所が無いことを」
「それでも、生きて欲しいと願うのは……いけない事なの……?」
死を願った。
俺は、死を願っておきながら、命を放棄出来ていなかった。
生きる渇望は既に失い、最早故郷に戻るという選択肢は存在しなかった。
俺の心を平気で抉ってくる子供らに、俺は言葉にするには決して相応しくない感情を抱いてしまった。
「――」
「――」
「――」