カオスドラマX

Gray Traveller / 586

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わったん 2026/04/19 (日) 19:33:07 修正 >> 580

「それで瘴気ストリームを超えてきたのか……」
「とんだバカじゃねぇか……」
「……俺に、何の用だ……牛飼いの旦那に剣を返すってんなら、今返すよ……」

「ううん、これ」

差し出されたのは、ケアルの魔石。

「……落としたもんだって言っただろ……」
「返す必要ない」

「拾ったから私達のもの」
「だから、あげます」

「……何故……?」

「上手く言えないけど、これが私たちの思い出になったから」
「おにいさんに、大切にしてほしかったんです」

「ただの気紛れ、それも処置しきらず、故郷の為にさっさと逃げるために置いてった魔石だぞ」

「故郷に急いでいるのに、渡してくれた魔石なんだよ」
「傷ついちゃうかもしれないのに、私達にくれたんだよ」
「それって、私達に無事に帰って欲しいからでしょ?」

「僕の傷、あのままだともうだめで……諦めてたんです」
「せめて、一欠けらのしずくだけでも届けようって思ったのに」

「……」

察するところ、少年の怪我を心配した少女。
その怪我を治す為のケアルを持たず、村に行こうにもしずくを手放せず、
少年も身動きが取れない状況。
その中で、最早諦観して留まっていたという話。

「……」
「……やはり、君達のキャラバンは……」
「『失敗』したのか……」

気づこうとしなかった話を、口にする。
力無く笑う少女と、泣きそうになりながらも頷く少年。

「音信不通になったキャラバンの後釜として、頑張ろうって話になったんです」
「村に残っている人は、他の村に移住するなり、色々あったんだけど」
「子供にそんなことさせられないって怒っちゃって」
「勝手に飛び出してきたんです」
「でも、しずくは結局一個しか集められなかった」
「余命が増えるだけの、ちょっとした希望」
「それでも、届けたかったの」

「……」

「残り少ない時間」
「だったら、おにいさんに貰った思い出を、私たちの死で止めるんじゃなくて」
「おにいさんに紡いで欲しかったの」

「……」
「知ってるだろ……もう、俺は紡ぐ場所が無いことを」

「それでも、生きて欲しいと願うのは……いけない事なの……?」

死を願った。
俺は、死を願っておきながら、命を放棄出来ていなかった。
生きる渇望は既に失い、最早故郷に戻るという選択肢は存在しなかった。
俺の心を平気で抉ってくる子供らに、俺は言葉にするには決して相応しくない感情を抱いてしまった。

「――」
「――」
「――」

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