カンカンカンッ!
金槌の音が、午後の静かな村に響く。
最後の釘を打ち込み、俺は汗を拭いながら身を起こした。
「――」
「よし、直った」
傾いていた車体が、均一を保つ。
その馬車に乗り込む村人が、数度揺らすと、満足げに微笑んだ。
「ありがとう、これで港まで行ける!」
「またなんかあったらよろしくな!」
「あぁ」
なんてことの無い日常。
見る風景が、嘗ての故郷ではなく、新たな生きる場に変わっただけ。
「……」
馬車を引いていく村人の背中を眺め、再び耽った。
今、俺はティパの村の人として生きている。
決して珍しくはない話だった。
ティダの村に流れ着いた他種族も、キャラバンの失敗から逃れる為に放浪していた。
誰もが、何かを喪い。
それでも、何処かで生き直していく。
「……」
俺が生きる決意を秘めた理由は、いくつかあった。
少女たちの思い出として生きる俺が死んでは、それは希望を紡ぐ話にはならない事。
仲間達が居たら、きっと俺に生きろと背中を押してくれていたと思う事。
そして、ティダの村の人々が、他の村に合流したんじゃないかという希望がある事。
何も絶望だけじゃない。そう思い込む事も大切だ。
欠落した俺の核は、何もすべてを自壊に追い込むわけではなかった。
「おい、レビ」
牛を引き連れ、牛飼いの旦那が俺に声を掛けてきた。
「子供たちが浜辺で稽古をつけて欲しいとよ」
「来年のクリスタルキャラバンの旅は自分たちがするだとかなんとか」
「裁縫屋の旦那はなんて言ってるんだ?」
「勇気に勝る希望は無しってな」
「次の旅は大人が主軸に立ち回る」
「世代交代も考えなきゃならんが、大事な子供達だ」
「こういう世界だからこそ、過酷な旅を共にして成長していくんだろうよ」
「……そうだな……」
「導いてくれる大人が居れば、その行路は学びが絶えない」
「俺もそう思う」
「じゃあ稽古つけてやってくれ」
「今か今かと待ってて、腕と剣がくっつきそうになるぐらいにワクワクしてんだ」
「ほら、レビ先生、行った行った」
そうしたかったかは定かではなかった。
だけど、旦那たちが俺に忙しなく頼みごとをしたり、
とにかく体を動かそうとさせていたのは、
辛い思い出を忘れさせるためだったんだと思う。
「……」
新しい、希望に満ちた思い出でその胸の傷を癒す為に、
ティパの村は俺を囲ってくれていた。