夕焼けが染まる頃、アルフィタリア盆地の中央部にまで到達した。
野営の準備をして、明日、ティダへ帰ることとなった。
「……」
俺が見る故郷は、俺の知る故郷ではないんだろうな。
その事実を噛み締めながらも、俺は明日、現実と向き合う。
そうしてはじめて、この世界を生き抜く事が出来る。
何も知らず生きて往った方がいいんだろうな。
でも、そうしないのは、俺にとってティダの記憶は大切だったから。
決して忘れてはならない、人生の縮図だったから。
「パマスの毛並みが酷いよ~」
「野菜達は洗ったよな?じゃあ食材をこっちに!」
「武器の手入れって職人感あっていいよな……」
思い思いに過ごすキャラバン。
俺も武器の手入れをしながら、夕餉の準備をする皆を遠くから眺めていた。
「おにいさん、明日だね」
少女が俺に声を掛ける。
「……あぁ」
「大丈夫って言ったけど、きっと俺は怖がると思う」
「……君達に、どうか助けて欲しい」
「勿論!私達は、おにいさんに助けられたんだもん」
「助け合いっこだよ!」
少女の笑みは、勇気そのものだった。
過去に直面するこれから、この笑顔は俺の恐怖を和らげてくれる希望だった。
きっと、俺と君の子も、こんな子だったんじゃないか。
そう信じて疑わなかったな。
「……あぁ、そしたら、これからも助け合いだな」
「ティダの村に帰郷したら、その思い出を抱えて」
「これからは君達と――」
そうして平和な心で会話をしていた時。
カンカンカンカンッ!
魔物が現れた事を示す警笛。
「襲撃だ!魔物の群れ、複数群確認!」
武器を手に取る。
野営に使用されていた火は全て消え、夕暮れの光が武器を照らす。
「包囲されてんぞ……!」
円を描くように、魔物たちはキャラバンを包囲する。
「周囲確認はしたのに……生息地域でもないぞ!?」
「気張れ!迎撃できなければ、物資を捨てて城に駆け込むぞ!」
「距離がある!厳しいぞ!?」
それぞれが状況判断をしながらも、その焦りは溢れるように迫っていた。
「……」
「盾を中心に扱うんだ」
「包囲された時は、攻撃に隙が生まれる」
「必ず防衛から入るんだぞ」
子供達に盾を握らせ、前線に立つ。
「凌ぐぞ……!」