『そいつがなんだってんだよ……』
『俺達がラモエと戦っている時、一切の姿を現さず』
『剰えラモエに吸収されたやつが』
「ミオさんは忘れ去られた思い出を基に、ミルラの木、そしてしずくを作っていた」
「今を生きる人々に希望を持ってもらえるよう、あの人は戦っていたんだ」
「思い出は不定形で、俺達がどれだけ想い焦がれていても、忘却に消え往くものだ」
「思い出すには、別の力が必要になったりもする」
「あの人は、思い出をそうしてしずくに変えて」
「生きる力を俺達に与えてくれていたんだ」
「その力は、やがて魂にまで澄み渡り」
「希望という名の太陽を心に灯す」
『……』
「違和感はあった」
「アトリちゃんの思い出を喰らったアイツが、俺の心根を示すようなE.G.Oを出すのか」
「だが、実際の所、クリスタルワールドで散っていったミオさんが築いた」
「ティパのクリスタルキャラバンの思い出の結晶だったんだろう」
「『旅人の思い出』」
「アトリちゃんがミオさんの問いに思い出で答え」
「ケアルで思い出をミルラに変えた残滓」
「俺と彼女の思い出が入り混じった」
「ミオさんが残した『記憶』そのもの」
『……』
「そんな思い出とは別に、人間ってのは『記憶』する」
「思い出とは異なる、無機質な概念」
「存在に刻まれた履歴」
「感情の有無すら問わず、ただ『在った』という事実を保存するもの」
「魂の深層に沈殿し続ける存在証明」
「例え忘れた事があったとしても」
「記憶という永続的な刻印は」
「嬉しかったことも、苦しかったことも、赦せなかったことも、愛したことも」
「其の全てが堆積し、圧縮して、一人の人間という鉱石を輝かせる」
「削れば痛む」
「砕けば散る」
「然し、磨けば――光る」
『……』
「思い出は『鍵』なんだ」
「感情が触れた過去」
「涙の熱、抱擁の柔らかさ、別離の冷たさ」
「忘れ去られてしまうもの」
「でも、そんな脆い鍵こそ」
「記憶という、魂そのものを変えてしまう強い輝きを、開放出来るんだろうな」
『……お前……』
「……レビさん、貴方は、忘れ去られてはならない人だ」
「それも、都市ではなく、故郷に刻まれるべき存在」
「貴方に今、必要なもの」
「決して今は手に入らないものだ。ただ帰るだけじゃない」
「貴方は、希望を持って帰らなくちゃならない」
「ケージいっぱいの」
「『ミルラのしずく』を」
『――』