「兄さん、疲れてんだろ。上がって行きなよ」
「村長も客が来たって喜ぶだろうからさ!あ、村長って、俺の婆ちゃんな」
青年が遠くへと走り、角材を運び始める。
「……」
ただ、歩む。
その村を。
「……」
遠くに見える、リルティとクラヴァットの子供達。
模擬戦用の剣と槍でつつき合い、逞しくも愛おしい顔で未来を担っていた。
「……」
木箱の上で身体を揺らす、セルキーの女性。
華やかで、それでいて何処か喧しさもあるような、
心地よい音色で、鼻唄を奏でていた。
「……」
家の前で本を眺める老人。
その瞳は、文字に飢え、知識を蓄える若き闘志でさえあり、
夜空に名を馳せんとするような野望を秘めていた。
「……」
俺は、知っている。
彼らのような人達を。
俺は、紡いできた。
彼らのような人達を。
俺は、俺は――。
「……」
歩む。
村の奥地まで、ただ歩む。
俺の家があった場所。
だが、其処には家など無く、まだ片付けきれていないような端材があるだけだった。
「――」
その奥に見えるミルラの木。
なんともまぁ、皮肉なもんだよな。
俺達が潰えた後に、希望なんざ残っちゃいない村に生えたってんだから。
それで救われたキャラバン達も居る。
そんなふうに割り切れるだけ、俺も風化したのは、ねじれた影響もあるんだろうか。
だが、そんな絶望の地が今、復興し始めている。
言葉で表現する事は出来ない。俺の表情が変わっている感覚も無い。
だが、なんだろうな。
「――」
世界は、俺達を見捨てていなかった。
俺達の死は、決して無駄ではなかった。
そう思うだけでも、救われる気がした。
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