カオスドラマX

Gray Traveller / 657

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わったん 2026/05/25 (月) 21:39:25 >> 656

「兄さん、疲れてんだろ。上がって行きなよ」
「村長も客が来たって喜ぶだろうからさ!あ、村長って、俺の婆ちゃんな」

青年が遠くへと走り、角材を運び始める。

「……」

ただ、歩む。
その村を。

「……」

遠くに見える、リルティとクラヴァットの子供達。
模擬戦用の剣と槍でつつき合い、逞しくも愛おしい顔で未来を担っていた。

「……」

木箱の上で身体を揺らす、セルキーの女性
華やかで、それでいて何処か喧しさもあるような、
心地よい音色で、鼻唄を奏でていた。

「……」

家の前で本を眺める老人
その瞳は、文字に飢え、知識を蓄える若き闘志でさえあり、
夜空に名を馳せんとするような野望を秘めていた。

「……」

俺は、知っている。
彼らのような人達を。
俺は、紡いできた。
彼らのような人達を。
俺は、俺は――。

「……」

歩む。
村の奥地まで、ただ歩む。
俺の家があった場所。
だが、其処には家など無く、まだ片付けきれていないような端材があるだけだった。

「――」

その奥に見えるミルラの木。
なんともまぁ、皮肉なもんだよな。
俺達が潰えた後に、希望なんざ残っちゃいない村に生えたってんだから。
それで救われたキャラバン達も居る。
そんなふうに割り切れるだけ、俺も風化したのは、ねじれた影響もあるんだろうか。
だが、そんな絶望の地が今、復興し始めている。
言葉で表現する事は出来ない。俺の表情が変わっている感覚も無い。
だが、なんだろうな。

「――」

世界は、俺達を見捨てていなかった。
俺達の死は、決して無駄ではなかった。
そう思うだけでも、救われる気がした。

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