「其処からの景色は、とてもいいものです」
腰を曲げ、目を細めた老婆が、杖を付いて近づいてきた。
「……この景色は、過去にも幾度も見えたもの」
「アンタが見たのは、つい最近か?」
老婆は小さく笑い、重力に従って首を下げる。
「ここ最近の出来事です」
「いくつもの家を建て直してきた中で」
「まだ、此処だけは手を付けられていません」
「それ故に、いつか家が建った折には、家族と共に眺めていきたいものです」
「……ここは、俺の家が合ったんだ」
「家族も居た」
「そして、未来を一緒に見据える妻と、共に待っていた子も居た」
「……」
「旅を……旅を、終えたのですか」
「……どうだろうな……」
「この新しい世界を見て回って欲しい」
「そう、託されちまった」
「でも、その前に」
「ケジメを付けなきゃならねぇと思ったんだ」
「死した者達の為に、俺を生かせてくれた者達の為に」
「俺を、里帰りさせてくれた奴の為に」
「俺は、また旅をしよう」
「そう、思っている」
「……そうですか……」
「里帰り」
「そうですか……貴方は、帰れたのですね」
「村に、家に、故郷に……」
「……あぁ……」
「でも、変わっちまったよ」
「確かに復興しているかもしれないけれど」
「なんだろうな」
「俺の知っているティダの村ではないんだって思うと」
「何処か寂しい気持ちもある」
「前に進んでいる証であると同時に」
「俺はまだ進めていない」
「だからこそ、一度この世界を見て回った方がいい」
「そんな気がしているんだ」
「……では、私が言える事は」
「行ってらっしゃい、なのでしょうか……」
「……?」
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