「母が言っていました」
「村から見える景色、アルフィタリア盆地から見える景色」
「その夕焼けに染まる日は」
「雨の時は少し寂しかったけれど」
「今は雨が降っても、綺麗な景色が見えるようになった、と」
「――」
「――」
「――」
――テトの、言葉だった。
「長年、願ってきたことが叶い始めた」
「村の復興は、積年の願望」
「代々紡がれてきた希望の証」
「――」
「黄金畑は無いけれど」
「それでも、この景色は」
「此処からしか見れない」
「――」
「私は、この景色が好きなので」
「――」
老婆が、声を掛ける。
老婆は、その皺くちゃな老婆は。
優しい声で、優しい足取りで、俺の隣まで、
しっかりと、ゆっくりではあっても、力強く歩いてきた。
「お母さんが教えてくれていたこと」
「決して希望を捨てず、諦めない」
「お父さんはきっと、そうしているから、と」
「口癖のように言っていた」
「――」
「いつしか必ず、帰ってくる」
「必ず希望を持ち帰ってくる」
「たくさんの思い出を抱えて帰ってくる」
「里帰りしてきてくれる」
「そう、いつも言っていた」
「――」
「――」
「――」
「お母さん」
「諦めないで良かった」
「生き続けて良かった」
「だって、ミルラのしずくを」
「こんなにもいっぱいの思い出を、希望を持ち帰ってきてくれたのだから」
「――」
「――」
「――」
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