キ ィ ン ッ !
「……」
「……」
慈悲は無い。だが、緩やかでやる気さえ感じられないその一振りに、
輪を纏った高熱機伝の熱源が受け止めるように答えた。

赤い残像を揺るがしながら、その視線はしたたかなものであった。
突き刺すような視線は彼を捉えており、だが敵対を意味するものでもなかった。
「う、うわあああ!!!」
ねずみは悲鳴を上げながら、裏路地の奥底へと逃げて行く。
V社も例外なく、数多の事務所が存在する。
22区で起きた『里帰り』における被害は極小であったものの、
その影響に於いて無視できない人物が居る事務所がある事。
それが此処で示された。
「何者(なにもん)だ、アンタ」
怪訝そうに目や口を尖らせる灰色の旅人。
そんな表情の変化に、対峙する男は僅かに視線を揺らし、ため息を深くついた。
「……」
「幾分か表情を変えるようになったな」
「透明の軌跡」
互いに武器を下ろし、視線を向け合う。
ヴェルギリウスのその台詞に対し、彼は更に眉を潜めた。
目の前の者が誰であるか、記憶には無い。
それ故に、彼の特徴となる赤い瞳。
そしてその瞳が彼を彼たらしめる物である事が分かる『赤い視線』の特色バッチ。
彼はその情報を脳内に咀嚼していき
「……赤い視線か……」
「特色フィクサーだな」
答えに辿り着く。
「……」
「お前程の人間が、何故自身の方向標を見失ったかは想像さえも拒否する出来事だが」
「どうやら人をよく見る癖は抜けきっていないらしい」
「俺の事を知っているようだな」
「そして、今まで会ってきた奴の中で類を見ない程に強い」
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