「……ユンフ」
「何処まで消え、何処まで覚えている」
「何も」
「旅日記の余白の事も、もう記憶にないか」
「言ってんだろ。俺に記憶は無い」
「お前は一貫して透明であるべきだった」
「何故都市の色に染まる」
「俺が都市の人間だから」
「頭、禁忌、外郭……」
「漠然と身体が覚えていることはある」
「だが、倫理観もクソも無い現状が目に入った時」
「俺は確かに此処に居なかった存在なんだろうなってのは理解した」
「だが、理解しただけであって、覚えている訳じゃねぇんだ」
「……」
「で、赤い視線が何の用だ」
「俺の事務所、孤児院はこの辺りに構えている」
「その時、お前の話を耳にした」
「随分と世話焼きなんだな」
「俺とアンタはそんなに仲良かったのかよ」
「……」
「虚無の旋律、モバイルデッド、8bitタウン、降格急降下席、そして……」
「コンパスのない兵士」
「そんな事件を解決してきた仲だ」
「訳わかんねぇ事件達だ」
「……」
俺は世界を蝕む瘴気を払い切ったティパの村・クリスタルキャラバンのユンフだ
ヴェルギリウスの脳裏に浮かぶ、嘗ての彼の姿。
あらゆる軌跡を思い出として担っていき、大切に書へと書き綴ってきた彼。
そんな姿を知っているが故、目の前の存在が過去の事件を蔑ろにしている様を見て、
ヴェルギリウスは再び、深く、深く長いため息をついた。
「流れに抗った結果が、今のお前なのか」
「都市の流れは残酷だ」
「俺はその流れに抗おうとは思っちゃいない」
「ただ武器を振るうだけ」
「そうしてりゃ、自ずと俺が何者だったのか分かってきてくれりゃあなって」
「……」
「お前は、『思い出の旅人』として都市に抗うフィクサーだった」
「透明の軌跡、などと呼ばれたのも、多くの色を背負い、種を蒔き、思い出という花を咲かせたからだ」
「だというのに……お前の本質は、今目の前に立っているお前そのものなのか……」
「……俺がどんな人物だったか、教えてくれるのか」