「いや……」
「興覚めだ」
「俺が導くには、お前という存在は既に都市に染まり過ぎた」
「自分自身の方向標を見付ける事の出来ていない人間には」
「俺の言葉が、俺の示す流れは理解出来ないが故」
「そうかよ」
「……さっきのねずみを庇ったのは何故だ」
「お前自身が示した抗いだ」
「それを代わりしてくれた、と」
「もう、その必要も無いことは存分に理解した」
「それは決して悲劇でもなく、悲観する事も無い」
「ただ、都市の循環に沈み往く焔が其処にあるだけ」
「……仲良かったにしちゃあ、冷たいんじゃねぇか」
「仲良くなろうとしていたのは、お前の方だったからな」
「へぇ」
「アンタのような怖いおじさんに、俺が、ね」
「……」
「V社は透明の軌跡の本拠地ではない」
「12区、L社の地こそ、お前がフィクサーとして奔走した本拠地だ」
「なるほどな、拠点がそもそもとして異なってた訳だ」
「そりゃあ上辺だけしか知らねぇ奴らしかいない」
「分かったらさっさと行け」
「今のお前の姿は、決して愉快ではない」
「俺の事、吐かねぇと戦う」
「そう言ったら?」
「……」
「は、冗談に決まってんだろ」
「アンタとやり合ったら、とてもじゃないが勝てる気はしない」
「……何の面白味もない冗談を……」
「勝手に失望してんじゃねぇ」
「俺は俺だ。例え抜け殻であろうとも」
「今こうして話し、歩き、感情を露呈させている」
「過去に縋るつもりはない」
「俺は俺という存在を知った上で」
「この都市を歩む」
「……」
「じゃあな、赤い視線」
鋼鉄を片手に提げたまま、彼は都市を歩む。
その背を眺め、一人の特色は心痛なる想いを抱え、
都市に見えた希望の種の一つが潰えてしまった事に、
ただ残念で仕方がないと唸った。
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