「あんま調子付いてると――」
霧の中でも光る雲工房の代紋。
その刃先が瞬時にユンフの首元に沿う。
「マジで斬るぞ」
その行為に対して、イラつきを隠せないのか、
ユンフは眉を潜めるも、一瞥もやらずに目を細めるだけであった。
「止せ」
「そいつは特色フィクサーだぞ」
後方から鼻に付く声が響く。
すると刃はスッと下ろされ、その場の視線はその声の元へと向けられた。
「ウチのもんが失礼をしました、『透明の軌跡』」
「まだ新米なもんで、許しちゃくれませんかね」
「俺の事を知ってんのか」
「伝聞だけですが、S社の地でウチのもんと随分と交戦――」
「あぁいや、ボコボコにしてくれたもんでね」
「そりゃあ被害は恐ろしいもんだったと」
「わりぃけど忘れてんだ」
「しかしS社というと19区か、随分と遠征してたんだな、俺」
「……」
「黒雲会副組長のアラシと言うもんです」
「狼の時間によって荒らされたのは小夜の縄張りでさぁ」
「ウチらはその後釜。親指の方々によって指示された場所を護っているだけ」
「折れた翼の権利を手にするための内郭での戦争」
「そのための拠点を担ってるってところかね」
「そう捉えていただければ充分」
「ですので、本来であればこの先は通行料を払ってもらい」
「こちらの棒を通行証として扱ってもらう手筈なんですが」
「金取んのかよ」
「いえ、見たところ文無し……」
「そもそも特色フィクサー相手にウチらがどうこう出来る手段は持ち合わせていない」
「ですので、先ほどの部下の無礼を赦してもらえれば」
「こちらは好きに通って頂ければと」
「ふ、副組長!」
「黙れィ」
「おめェが意地汚く誰でも彼でも見境なしに検問すっからこうなんだよ」
「……失礼。如何でしょうか、透明の軌跡」
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