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振り抜いていても可笑しくは無かった。
「……」
だが、透明の軌跡はその時、剣に手を掛けず、
ねじれの言葉に耳を傾けてしまった。
「……」
伸ばした手を戻し、ゆったりと歩む。
決して敵意を消失させたわけではない。
だが、その歩く様は以前まで組織を相手していた彼のものではなく、
老人の話を聞きに行く若者のように整然としていた。
生きた走馬灯の両刃に届く位置まで身を動かし
「何故、離れる事を拒む」
ねじれと『対話』をした。
『……』
『……透明の軌跡……』
『……私を、覚えているか』
「知らねぇよ」
「あと質問に答えな」
『……その揺らぎから察するに……』
『貴方は、貴方自身を忘れ去った墓守か』
「……」
『辞せぬ足跡は世に残り、厳格に貴方自身を背比べする』
『その真似事にも思える道は、貴方が歩む行路を正しく示す』
『だが、何故だろうか。貴方が見据えた道を塞ぐ私は』
『決して貴方を見てはいないというのに』
『私に問いかける術を持つ貴方は、何故こうも空虚なのか』
「……」
深く、深く、ため息を付く。
今にも背の鋼鉄を思うがままに振ろうかとさえ考える。
だが、彼はその思考に蓋をした。
ねじれに対する理解を示すことは、ユンフが行っていたであろう都市の流れに反する利己。
その道を歩むことは、自身の存在がユンフとして確立していくことへの前進となる。
それ故、彼は力で目の前のねじれを鎮圧しようとしていた。
「……気に入らねぇ……」
同時、彼は理解したかった。
誰にも今自身の彼を理解されない事への憤り。
それは目の前に佇む『ねじれ』という存在も同じこと。
都市に生き往く人々から怪物扱いされ、フィクサー含むあらゆる戦闘能力を持つ人々から迫害されし感情。
重ねてしまったのだ。
「記憶を持っているってのに、空虚じゃねぇってのに」
「心の折れ方に沿って自身を表現するお前らが、気に入らねぇ」
自分自身と。