カオスドラマX

Gray Traveller / 689

689
わったん 2026/07/12 (日) 22:47:32 >> 685

街灯が照らす公園の隅々。
私はその空間が平等に訪れる事を好んでいた。
昼にしろ夜にしろ、其処には街灯が示す退路がある。
休む事、逃げる事。
何かに向き合い続ける上で、それぞれのペースがある中、
私は其れを肯定した。
私は常に、都市の呪縛から逃げ続けていたから。
だからこそ、街灯が僅かに示す地面の色が、私にとっては逃げ道だったのだ。

「でも、おじさんは協会のフィクサーなんでしょ?」
「じゃあ、逃げられないじゃん」

子どもは時々、純粋が故に逃げ場を閉ざす。
私は結婚も、恋愛も、ましてや友人関係も、何も上手く行くことはなかった。
それでも、巣に住まうという幸福の定義が、私にとっては救いであり、
同時にそれしかないと思っていた。
だが、其処に照らされる街灯は、私の影を大きく引き伸ばしてくれたのだ。
彼ら自身が、私にとっての逃走経路でもあった。
未来を託す若者。
血の繋がりも、親密な関係も無い。
一般市民同士の顔見知り。
だが、その縁が集うこの公園の人々が、
私にとって、幸福の延長線に存在する希望だった。

「君達がいざとなったら助かるように」
「私は逃げるわけにはいかないのさ」

勿論、彼らもまたいずれ都市に染まっていく事になるだろう。
ましてや、既にその片鱗を垣間見ていても可笑しくはない。
裏路地の悲鳴も、外郭に捨てられし物語も、
見ようと思わずとも見てしまう事さえあるから。

「じゃあ、この公園が安全地帯ってことだね」

「ハハハ、そうだな」
「そう言ってくれると、私もサボりがいがある」

街灯に照らされし無垢。
街灯を照らす者達。
私は巣が安全である限り、此処を護り続け、
そして逃げ道となれるよう、留まり続ける。
そう、願った。


通報 ...