カオスドラマX

Gray Traveller / 698

698
わったん 2026/07/19 (日) 22:19:19 >> 696

『……対話とは、未来に残る過去の残滓』
『その残滓が人の感情となり、また別の人へと伝播する命の雫』
『護られるべき尊い行程』
『貴方に課せられていた使命は、既に曲線を喪っており』
『私に提示する為の道は閉ざされている』
『故にこそ、貴方は私と対話するべきではなかった』
『私を、最初から鎮圧すべきだったんだろう』

「……確かに、アンタを倒せばそれで話は終わりだ」
「俺は都市の人間として依頼され、都市の人間としてアンタを始末する」
「普通の話」
「だが、これは俺の感覚だ」
「俺と同じように空虚になったはずのアンタに理解を示せなきゃ」
「俺はこの先、本当に自分を見付ける事なんて出来ない」
「だから、俺は対話を選んだんだ」
「選んだはずなのに」
「……答えが、出ない」

『それを成してきたのが』
『過去を彩る貴方、透明の軌跡だった』

「……」

『准えるべき過去は、持つものが提示する記録』
『それが退路であり、自分自身を形成するものである』
『思い出を持ちえない貴方が、私に言葉を投げかけること自体』
『それは時間の浪費に過ぎず、ただ立ち止まるだけの出来事』
『利口ではない』
『貴方は、都市の人間であるが故、過去で私を示す事は出来ない』

「……」

『見逃すという選択は、そもそもとして存在しないのだろうな』
『いずれにせよ、私は此処でいつか死ぬ』
『貴方の手によってではなく、他人の手によって』
『此処で死に往く事こそが私の望みであり』
『それが退路を示す事となるのだから』
『それなら、透明の軌跡』
『今此処で、貴方が剣を振ろうが振らまいが』
『結末は変わらない』
『貴方は、『ユンフ』ではないから』

「……」

生きた走馬灯が此処を離れない理由。
それは自身の退路を護れなかったことに対する罪悪。
そしてその罪悪から解放される為に、
自身の成したい事。この場を護る街灯となりながらも、この場で散る事。
透明の軌跡は、生きた走馬灯が望む顛末に対して、
示せるものが何もなかった。
過去も思い出も、何もなかった。
だからこそ

「なら……それなら……退路なんかじゃなく」
「進路を見付けたらどうなんだよ……」

未来への想いを、吐露する事にした。

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