- Gray Traveller
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『……』
『決裂にも及ぶ時間が過ぎた』
『これ以上、時間の浪費を重ねてどうする』
「アンタは見てくれたんだろ、『俺』を」
「俺はユンフじゃねぇ」
「分かってる。そのやりきれない感情をどうにかしようと、アンタに言葉を投げかけた」
「透明の軌跡である事を、ユンフを知っていて尚」
「俺に言葉を投げてくれた」
『憧れにも近しい感情を、嘗ての貴方に寄せていただけだ』
「それは過去の透明の軌跡に彩られた感情だろ」
「だが俺は違う。俺は今を生きる透明の軌跡だ」
「生きた走馬灯が位置するこの場所、それが小さな翼なんだろ」
「俺は其処でアンタに存在を認められ、歩み出そうとしている」
「ユンフは、過去を以てして軌跡を描いたんだろう」
「なら俺は、未来を以てして軌跡を描きたい」
「その為には生きた走馬灯」
「俺はアンタを――」
ヴォンッ!!
振り下ろされた刃が、透明の軌跡の足元を砕く。
無限にも散らばる石畳の素材が、頬を切り裂いた。
「……」
『私を救うことは、この場から離れる事を意味する』
『私は、決して此処から離れたくないが故』
「……」
『軌跡の描き方は千差万別だ』
『それは慈悲にもなり、苛烈にもなる』
『満たされもしない現実は、時に恐ろしい程に波を押し寄せる』
『君はその軌跡を描くには、きっと何もかもが足りていない』
『私を真の意味で背負う事は、君の退路が無くなってしまう』
「……やろうとしている事は、同じってことか……」
『君は、私の翼の一部になってくれるんだろう』
『なら、護りたいじゃないか』
『ユンフではなく、君というそのものを』
「……ここで俺が剣を握る事は、それは都市に染まったままになっちまう」
「それじゃあ俺の軌跡は――」
『君なら描けるさ』
『私が灯す街灯を、君は見る事が出来た』
『かつてユンフが描いた軌跡にも無い、私の街灯を』
「……」
『始めようか』
『この戦いは、決して哀しいものではない』
『及落が決まらない内に、この場所から逃げるんだ』
『今日、誰も泣かなければ、それでいい』
「……」
「……あぁ」
振るわれる両刃に応えるように、
透明の軌跡は剣を抜いた。
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理解し合う事は出来なかったんだろうか。
俺はただ、アンタが過去に縛られてこの場所を離れられずにねじれてしまったって言うから、
無責任にはならないように、言葉を考えて未来を提示したつもりだった。
それでも、アンタには刺さらなかったんだろ。
あとは都市らしい解決の仕方をすればいいって。
あぁ、それでいいはず。
それでいいはずなんだ。
だが、何故俺はその流れに沿わなければならない。
俺が示した未来への軌跡は、生きる事そのものだ。
あとはアンタが俺の手を取ってくれればよかったはずなのに。
俺には何が足りなかった。
アンタの何を知り得なかった。
ユンフなら、どう諭した。
俺は、何故、言葉を紡げない。
『やはり、特色だな』
『それは君の力だ』
『紛れもなく、君自身の力』
「……」
『私に手を掛けてくれたのが、君でよかった』
『……退路は、前にもある事を教えてくれた』
『なら、君は思うがまま、進路に向かえばいい』
「……」
『どうか、御無事で』
都市に生を授かってから、敵対するものや、
今後の支障に来す者、あとは被害に直結する気に入らない奴は、殺してきた。
だからだろうな。
俺が今手に掛けたこの物語は
「……」
「……」
「……」
俺の感情に、『過去』というものを、強く突き刺してきた。