コモン界の馬について。くり返し。
「サラブレッドの洗練さはない」(旧)
「横浜の郊外で見かける農耕馬にちかいもの」(新)
どういう違いなのかというと、少年迫水がサラブレッドの競走馬よりは、農耕馬を見知っている。
馬の角について。
「ゆらゆらと上下する馬の額の真直ぐでありながらねじれを持った角」(旧)
「三角の角をせっせと上下させる馬」(新)
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コモン界の馬について。くり返し。
「サラブレッドの洗練さはない」(旧)
「横浜の郊外で見かける農耕馬にちかいもの」(新)
どういう違いなのかというと、少年迫水がサラブレッドの競走馬よりは、農耕馬を見知っている。
馬の角について。
「ゆらゆらと上下する馬の額の真直ぐでありながらねじれを持った角」(旧)
「三角の角をせっせと上下させる馬」(新)
迫水は唐突にゴビ砂漠めいた光景を目の当たりにしても、混乱や不安を感じる余地のない圧倒的な実在感の只中にあって、ファンタジーにありうる「まるで夢を見ているかのような実在感のなさ」というのでは、ない。すごくリアル。かなりの間は異世界という概念もなく現実としか思えない。
太陽がないことに気づく。完全版ではアマルガンが一言挟み、バイストン・ウェルでは燐塊 のことかという。燐の光のような表現はシリーズ作品でいうが、このルビは初出か。完全版の迫水はアマルガンに敬語で話す。
砂丘に昇ると、集落が見える。旧版では二、三十キロ先にあるものが、完全版では数キロ先にある。
横浜育ちの迫水にもアマルガンとハロウの人種がわからない。旧版では「異人種」だと思う。完全版では、迫水の知る白人よりは中近東の肌色に見える。上の、死人のようなフェラリオの色みはそのように省略。
言葉のちがいとテレパシーの介在に気づかずにしばし混乱。
アマルガンの国の名はツォ(旧)、またはシィ(新)。
「シンの住む世界では日本語で済むわけなのだな? 我々と同じこの言葉で」(旧)
「シンの住む世界ではニホンゴではすまないのか?」(新)
ここは旧版の文意が誤りらしい。
「?……違う言葉を話す人とは、話ができないのか?」
「できない。はい、か、いいえも分らない」(旧)
「ちがう言葉を話す人とは、話ができないのか?」
「はい、か、いいぐらいしかわからないものです」(新)
対読といっても、こんな煩雑なことをするのがわたしの主旨ではないから、このあとはもうちょっとポイントを押さえて読みたい。
ハロウの「死人のような美貌」というのは良いところ。そういうところだ。今夜ここまでにしよう。