カオスドラマX

Gray Traveller / 464

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わったん 2026/01/11 (日) 19:04:46 >> 462

次第に、身体は僕のものではなくなっていった。
関節は可動域を測るために分解され、
皮膚は薬剤反応を見るために切開され、
内臓は保存と交換を繰り返した。

鏡を見る機会は無かった。
だが、自分が「人の形」から逸脱していくことは、他者の反応で理解できた。
彼らの視線が、
「患者を見るもの」から
「標本を見るもの」へと変化していく、その微細な差異。
それでも僕は幸せだった。
僕を必要としてくれるその眼差しは、僕だけのものだったから。
恐怖は、観測の邪魔になる。
悲しみは、数値を乱す。
怒りは、再現性を下げる。
そうして感情は、少しずつ削ぎ落とすことにした。


代わりに残ったのは、
役に立っているという実感だけだった。
研究結果は良好だった。
僕の身体を通して得られた技術は、
義肢となり、補助器官となり、
延命装置として量産されていった。

僕の存在は分割され、
僕ではない誰かの生活を支えていく。
それは、誇らしかった。
だが同時に、僕の中から「何か」が抜け落ちていく感覚もあった。

夢を見なくなった。
未来を想像しなくなった。
自分がこの先どうなりたいのか、考えなくなった。
考える必要がなかったのだ。
すでに役割は与えられていたから。

最後に残されたのは、
空間だった。
心があった場所に、
ぽっかりと空白が生まれていた。
研究が終盤に差し掛かった頃、
僕はふと考えた。

終わったら、どうなるのだろう、と。


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